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若年(AYA)世代がん患者に対する妊孕性温存療法について

No.4943 (2019年01月19日発行) P.56

桑原 章 (徳島大学大学院医歯薬学研究部産科婦人科学分野准教授)

古井辰郎 (岐阜大学大学院医学系研究科 産科婦人科学分野臨床教授)

登録日: 2019-01-16

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  • 若年(adolescent and young adult:AYA)世代がん患者に対する妊孕性温存療法は,どのような場合に勧められますか。岐阜大学・古井辰郎先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    桑原 章 徳島大学大学院医歯薬学研究部産科婦人科学分野准教授


    【回答】

    【情報提供や,がん診療と生殖医療の連携が重要】

    (1)生殖臓器に対する手術,性腺毒性を伴う薬物治療,骨盤放射線照射等によりがん治療後の妊孕性低下が生じる場合

    妊孕性温存治療には,婦人科がんに対する温存手術,骨盤放射線照射に対する卵巣遮蔽・移動術,化学療法等による性腺機能低下に対する生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)を用いた配偶子や胚の凍結保存などがあります。
    ARTの発展・普及や国内外の各種ガイドライン,第3期がん対策推進基本計画(以下,第3期基本計画)などにより,がん診療における生殖医療へのニーズが増加しています。しかし,すべての若年がん患者が,ARTによる妊孕性温存療法の対象となるわけではありません。

    (2)がん治療を最優先とし,治療や再発リスクに悪影響が少ない場合

    2017年に日本癌治療学会により発刊された「小児,思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン」(以下,日本癌治療学会GL)では,総論の冒頭に「1. がん治療医は,何よりもがん治療を最優先とする」と記載されています。これは,妊孕性温存療法の実施が,がん治療の予後に影響を与える可能性が考えられるためです。具体的には,原疾患に対する治療の遅れ,卵巣刺激や採卵などが原疾患に与える影響についてなど,原疾患の主治医と生殖医療専門医が十分に情報を共有し,患者にも正確に伝えてその適応を判断する必要があります。

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