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(5)稀な合併症─PSReA,PANDAS[特集:文献を紐解く 溶連菌のこんな話題]

No.4937 (2018年12月08日発行) P.45

鵜木友都 (飯塚病院総合診療科)

登録日: 2018-12-10

最終更新日: 2018-12-05

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溶連菌感染後の合併症として,稀ではあるが溶連菌感染後反応性関節炎(PSReA)と連鎖球菌感染性小児自己免疫神経精神障害(PANDAS)がある

PSReAと急性リウマチ熱(ARF)は臨床像が異なり,予防的抗菌薬の必要性も異なる

PANDASは,A群溶連菌感染後に突然チック障害や強迫性障害を呈するものである

PSReAとPANDASの疫学情報は乏しく実際の頻度は不明であるが,その存在は知っておくとよい

1. 溶連菌感染後反応性関節炎(PSReA)とは

A群β溶血性連鎖球菌(group A Streptococcus:GAS)感染後の合併症として,急性リウマチ熱(acute rheumatic fever:ARF)は有名である。ARFは,発展途上国においては依然として公衆衛生上の大きな問題であるが,先進国ではその発生率は著しく減少している。ARFの診断基準として,Jones criteriaが知られており,これは1944年にThomas Duckett Jones(1899~1954年)により提唱され,1965年から現在まで改訂を繰り返し,最新の改訂は2015年に発表されている(表1)1)。主要症状は“JONES”,Joint(関節炎),Organ=carditis(心炎),subcutaneous Nodules(皮下結節),Erythema marginatum(遊走性紅斑),Sydenham’s chorea(舞踏病)と覚えるとよいが,最も多い臨床症状は,心炎(50~70%)と関節炎(35~66%)である1)。最新の改訂では,心エコー所見を診断基準に盛り込んだことが特徴である。

 

心炎をはじめとしたJones criteriaを満たさないGAS感染後の関節炎の症例を,Creaらが1959年に,最初に報告している2)。その後も症例報告が続き,1982年にGoldsmithとLongがこれらの関節炎症例を,溶連菌感染後反応性関節炎(post-streptococcal reactive arthritis:PSReA)として記述したのがPSReAの始まりである3)。しかし,現時点でコンセンサスのとれた明確な診断基準はない。2000年にMayo ClinicのAvilesらは,1976~98年の症例で6人の成人例の報告をしており,その分類基準として,①まず溶連菌感染症の症状があり,もしくはその後に急性の無菌性関節炎がある,②培養の陽性,もしくは抗ストレプトリジンO抗体(anti-streptolysin O antibody:ASO)かanti-DNase Bの抗体価の上昇,③Jones criteriaを満たさない,とした4)。2009年にvan Bemmelらは心炎の合併を前向きに検討するために,PSReAを分類する基準を,①関節炎症状があり,②最近の発熱・咳・口峡炎のどれかがあり,③血清学的溶連菌感染の証明(ASO>320U/mL,anti-DNase B>400U/mL,もしくはASOが2~3週間以内に4倍以上の上昇)がある,とした5)。ちなみに後者の研究の結果,PSReAでは心臓弁膜症の合併がないことが示された。

以上より,PSReAは「溶連菌感染後の関節炎で心合併症が起こらないもの」と大雑把にとらえてよいだろう。

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