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てんかんの緩和外科治療

No.4934 (2018年11月17日発行) P.56

越智さと子 (札幌医科大学脳神経外科)

江夏 怜 (札幌医科大学脳神経外科)

三國信啓 (札幌医科大学脳神経外科教授)

登録日: 2018-11-17

最終更新日: 2021-01-07

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【迷走神経刺激療法(Vagus Nerve Stimulation:VNS)と脳─心臓連関】

適切な抗てんかん薬を2剤以上,十分量使用してもコントロールできない難治性てんかんは,全てんかんの20~30%と推定され,外科治療の適用を考慮する。臨床像と画像電気生理学発作焦点が一致し,根治性が期待できる場合,開頭焦点切除術が選択される。多発性,両側性,全般性てんかん,開頭術後発作残存例には,症状軽減を図る緩和的外科治療である脳梁離断術や電気刺激療法等がある。迷走神経刺激療法(VNS)は,胸部皮下に埋め込む刺激装置(pulse generator)から,左頸部迷走神経に留置するらせん型電極(リード)を介し上行性間欠的に刺激する緩和治療法で,わが国では2010年7月に保険適用となった。

50%発作減少率は1年目約50%,2年目60~75%と,時間とともに上がる。発作消失率は5~10%で根治性は低い。ドラベ症候群のNaチャネル異常に伴う症候性全般てんかんにも約半数で有効と報告されている。刺激条件が治療効果を左右し,総出力電流量と治療効果は相関する。副作用には,嚥下障害,咳むせ,嗄声疼痛や睡眠時無呼吸等があり,調整で軽減を図る。情動安定や社会性,会話言語,認知機能改善,等の副次効果があり,QOLを改善する。脱力発作主体の場合は,脳梁離断術が推奨される。発作時に生じる心拍増加,T波異常,不整脈等の脳─心臓連関が,てんかんによる突然死(SUDEP)との関連で注目されている。VNSは発作減少によりSUDEPリスクを軽減する。

新機材VNS-Aspire SRは発作時心拍数上昇を感知し自動刺激機能(auto stimulation)を持つ装置で,17年夏に認可された。睡眠時発作軽減等の効果が期待される。

【解説】

越智さと子,江夏 怜,三國信啓  札幌医科大学脳神経外科 *教授

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