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CKDとフレイル

No.4932 (2018年11月03日発行) P.51

猪阪善隆 (大阪大学腎臓内科教授)

登録日: 2018-11-01

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【腎機能の低下したCKD患者はフレイルの合併率が高い】

フレイルは,一般的に「臨床的に障害をきたす閾値があると仮定すると,その閾値に近づき,あるいは超えて,予備能を持つ身体機能が複数低下している状態」と定義される。Friedはフレイルの定義として,①体重減少,②疲労感,③活動量低下,④緩慢さ(歩行速度低下),⑤虚弱(握力低下),の5項目を診断基準として,3つ以上当てはまる場合をフレイルと診断し,1つまたは2つ該当する場合はプレフレイルとした1)。全米健康栄養調査(NHANES Ⅲ,1994~98年)によると,糸球体濾過量(GFR)の低下あるいはアルブミン尿陽性の慢性腎臓病(CKD)患者は,筋肉量の減少を高頻度に認めている2)。腎機能が正常な高齢者ではフレイルの罹患率が6%であったのに対し,高齢CKD患者では15%と,フレイルの罹患率が高い,という報告もある。末期腎不全になるとさらに罹患率は上昇し,40歳未満で44.4%,50~60歳で66.4%,80歳以上で78.8%に及ぶ。フレイルの合併は透析患者において,死亡や入院に対する独立した危険因子となっている。

蛋白制限に伴うカロリー摂取不足や低栄養,テストステロンやビタミンDの低下は,筋肉量や筋力の低下をきたす。逆に,アンジオテンシンⅡやPTH,インスリン抵抗性は筋肉の蛋白分解を亢進させる。そのほか,腎性貧血やアシドーシスなどの要因により,CKD患者はフレイルのリスクが高まる。

【文献】

1) Fried LP, et al:J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001;56(3):M146-56.

2) Foley RN, et al:Am J Nephrol. 2007;27(3):279-86.

【解説】

猪阪善隆 大阪大学腎臓内科教授

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