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水害の際の死亡診断書(死体検案書)の死因はどう分類するか?

No.4931 (2018年10月27日発行) P.62

西村明儒 (徳島大学大学院医歯薬学研究部法医学分野 教授)

登録日: 2018-10-25

最終更新日: 2018-10-23

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厚生労働省の「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」によると,死因の種類の「8. その他」は「熱中症(熱射病等),凍死等の異常な温度環境への曝露,潜函病,感電,機械による事故,落下物による事故,落雷,地震等による不慮の死亡」を含むとされています。これは自然災害による死亡が8に含まれると理解していますが,台風や豪雨などに基づく洪水により溺死したものも「4. 溺水」ではなく,8でよいでしょうか。またそのような場合,本来ならば被災するはずのない者が興味本位で増水した河川や用水路等を見に行き,誤って転落し溺水した場合も8に含まれるのでしょうか。用務で見に行って転落し,溺水した場合も同様に8でしょうか。

(岡山県 M)


【回答】

【自然災害による死亡として,「その他及び不詳の外因」に分類すべき】

現在,用いられている死亡診断書(死体検案書)の書式は,1995年にWHOが“International Classification of Diseases”9(ICD-9)をICD-10に修正するに際し,導入されています。ICD-10では,すべての傷病は,アルファベットと4桁の数字で分類されており,具体的には,A~Rは疾病であり,S~Tは外因です。さらに,V~Zは,外因死の状況を修飾するもので,医療や保健サービスも含まれており,医療過誤のみならず,広く医事紛争も念頭に置かれた構成となっています。

これを受けて,わが国の死亡診断書(死体検案書)では,死因の種類として,1.病死及び自然死,不慮の外因死(2.交通事故,3.転倒・転落,4.溺水,5.煙,火災及び火焔による傷害,6.窒息,7.中毒,8.その他),9.自殺,10.他殺,11.その他および不詳の外因,12.不詳の死,の12項目に分類しています。それぞれの項目は,ICD-10コーディングに則って定められており,ご質問の「台風や豪雨による洪水での溺死」をどこに分類するかは,ICD-10の構造を解説する必要があると考えます。

ICD-10では,外因死の状況を表現するための分類をV~Zに用意しており,4.溺死に該当する部分を表1 1)に,8.その他に相当する部分を表2 1)に示します。これによるとW69およびW70には,自然の水域に関するものが示されていますが,X37には暴風雨,X38には洪水が示されており,ご指摘の通り,台風や豪雨に基づく洪水で溺死した人は,8.その他に分類すべきと考えられます。また,自殺目的で洪水に身を投げたり,故意に他人を洪水に投げ込んだりするのでなければ,不慮の外因死と考えられるので,たとえ興味本位で洪水の見物に行ったのであっても,本人の過失の大小には関係なく自殺行為ではありますが,自殺ではなく8.その他に分類されると考えます。

 

【文献】

1) 厚生労働省:疾病, 傷害及び死因の統計分類. イ. ICD-10(2013年版)準拠内容例示表. 第20章 傷病及び死亡の外因(V01-Y98).
[https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/dl/naiyou20.pdf]

【回答者】

西村明儒 徳島大学大学院医歯薬学研究部法医学分野 教授

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