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非触知精巣の治療方針

No.4924 (2018年09月08日発行) P.54

東 真弓 (京都府立医科大学小児外科)

田尻達郎 (京都府立医科大学小児外科教授)

登録日: 2018-09-08

最終更新日: 2018-09-04

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【腹腔内精巣か萎縮精巣か】

精巣が陰囊内から鼠径部にかけて触知されない場合(非触知精巣)には,腹腔内停留精巣と萎縮精巣の可能性が考えられる。

停留精巣では体温の影響により精巣の機能異常やがん化が懸念されるため,手術による陰囊内への固定が必要である。手術前の画像検査としてMRIが施行されるが,感度は85%程度とされ,描出されない場合に完全に腹腔内精巣を否定することができない。このため,診断と治療を兼ねて審査腹腔鏡が行われることが多い。

腹腔内に精巣が認められた場合は,そのまま根治手術の方針となる。精巣周囲の剝離により陰囊底部までの引き下ろしが可能である場合は,一期的に固定が行われる。精巣血管の緊張が強く,一期的な固定が不可能である場合は,多段階的手術(Fowler-Stephens手術)が選択される。この場合は初回手術時に精巣動脈のみ結紮切離し,待機的に側副血行路の発達を促す。一定期間の後に2回目の手術にて精巣周囲の剝離を行い,陰囊底部への固定を行う。萎縮精巣の場合は遺残した精巣の摘出が行われることが多いが,がん化や抗精子抗体産生のリスクは低いとされており,不要とする意見もある。

両側の非触知精巣の場合,補助診断法としてホルモン負荷試験がある。hCG負荷により前後のテストステロン値を測定し,精巣組織の有無を確認することが可能である。患児に合併症があり,腹腔鏡手術のリスクが高い場合などの方針決定に有用と考えられる。

【解説】

東 真弓,田尻達郎  京都府立医科大学小児外科 *教授

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