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維持血液透析患者における薬物動態はどのようになっているか?【腎排泄型か肝代謝型かによって除去率が変わるため,それぞれに合わせた対応が必要となる】

No.4920 (2018年08月11日発行) P.64

山本武人 (東京大学大学院薬学系研究科医療薬学教育センター講師)

登録日: 2018-08-10

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維持血液透析患者が薬剤〔降圧薬のアンジオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin converting enzyme inhibitor:ACEI)など〕を内服した場合の薬物動態はどうなるのでしょうか。透析による当該薬剤の血中濃度の低下や効果減弱はないのでしょうか。

(大阪府 W)


【回答】

維持血液透析(hemodialysis: HD)により除去されやすい薬剤は,基本的に腎排泄型薬剤と考えて差し障りありません。そのため,一般に腎障害時に用量調節が必要となる薬剤ではHD導入患者に対する投与量に注意が必要です。代表的な例は抗菌薬で,薬物によってはHDにより血中濃度が50%以上も低下することがあるため,HD後の補充投与が必要です。一方で肝代謝型,言い換えれば腎障害時に用量調節が必要ない薬剤では,HDによる薬物動態変化は基本的に無視できる程度であるため,血中濃度の低下や効果減弱は考えなくてよいでしょう。

ご質問にあるACEIは,薬剤によって程度の差はあるものの,体内からの消失に腎排泄が関与しています。そのため,ある程度はHDにより除去されることが知られており,特にリシノプリルではHDによる除去率が約50%と大きいことが知られています。一方,同じくレニン・アンジオテンシン系阻害薬(renin angiotensin system inhibitor:RASI)に分類されるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensin Ⅱ receptor blocker:ARB)の多くは胆汁排泄の寄与が大きく,HDではほとんど除去されません。その意味では,ACEIよりもARBのほうがHD導入患者には投与しやすいと言えます。

しかし,通常ACEIはHD日に服用する場合はHD後に服用しますので,HDによりACEIの濃度が低下してもすぐに補充され,降圧効果への影響は限定的です。したがって,通常はHD導入患者であってもACEIによる治療継続が可能と考えられます。ただし,HD導入後に血圧上昇が認められる症例では,HDによるACEIの除去が原因となっている可能性はあり,一般に透析性が小さいARBへの変更も選択肢にはなると考えられます1)

しかし,ACEIとARBはともにRASIに分類されるものの,臓器保護や生命予後に対する効果に差があることが知られており2),臓器保護作用についてはACEIのほうが優れているとする報告も多いようです。そのため,実際に変更するか否かは,薬物動態的な観点に加えて,長期予後に対する効果も含めた慎重な検討が必要です。

【文献】

1) Inrig JK:Semin Dial. 2010;23(3):290-7.

2) Wu HY, et al:BMJ. 2013;347:f6008.

【回答者】

山本武人 東京大学大学院薬学系研究科医療薬学教育センター講師

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