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羊水塞栓症の病態・診断法とわが国の現状【近年,物理的塞栓よりはアナフィラクトイド反応による発症機序が主と考えられている】

No.4917 (2018年07月21日発行) P.57

左合治彦 (国立成育医療研究センター副院長/周産期・母性診療センター長)

金山尚裕 (浜松医科大学医学部産婦人科学教授)

登録日: 2018-07-20

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  • 非常に重篤な疾患であるにもかかわらず,なかなか理解しにくい羊水塞栓症について,その病態と診断法ならびにわが国の現状を教えて下さい。
    浜松医科大学・金山尚裕先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    左合治彦 国立成育医療研究センター副院長/周産期・母性診療センター長


    【回答】

    羊水塞栓症は,羊水が母体に流入して肺塞栓が発生すると長らく考えられていましたが,近年羊水による物理的塞栓よりは,アナフィラクトイド反応による発症機序が主なものと考えられています。

    羊水は夫抗原由来の異種蛋白を含んでおり,その羊水が母体血中に流入し羊水に対し過剰に反応した場合,アナフィラクトイド反応が発生し羊水塞栓症が発症すると考えられます。すなわち,母体側の防御因子と刺激因子(羊水流入)とのバランスが崩れたときに発症します。病態として補体系,キニン─カリクレイン系の活性化により,子宮や肺を中心に急激に血管透過性が亢進し,間質に血管浮腫が発生し子宮弛緩症・肺水腫となります。またアナフィラクトイド反応により急激に播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)が発生します。その結果,発症初期には出血量に見合わない低血圧やDICが発生します。

    臨床的診断法は下記の通りです。

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