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SGLT2阻害薬には加齢黄斑変性改善効果があるか?【新生血管には作用しないため無効】

No.4915 (2018年07月07日発行) P.61

野間英孝 (東京医科大学八王子医療センター眼科准教授)

登録日: 2018-07-06

最終更新日: 2018-11-28

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SGLT2阻害薬に加齢黄斑変性を改善させる効果がある可能性があると聞きましたが,根拠などをご教示下さい。

(東京都 S)


【回答】

結論から言いますと,SGLT2阻害薬は,残念ながら加齢黄斑変性には効果がありません。後述しますが,SGLT2阻害薬は血糖を下げる薬ですので,糖尿病網膜症には効果があります。

SGLTとは,sodium glucose cotransporter(sodium glucose transporter)の略で,「ナトリウム・グルコース共役輸送体」と呼ばれる蛋白質の一種のことです。SGLTは,体の中でグルコース(糖)を細胞の中に取り込む役割をしています。SGLTにはいろいろなタイプがありますが,糖の取り込みにはSGLT1およびSGLT2が関わっています。SGLT1は腎臓だけでなく心臓や小腸にも分布しています。一方,SGLT2は腎臓のみに分布しています。腎臓は,血液の中から必要なものを体の中に取り込み,要らないものを尿として出す働きをしていますが,実は,この働きはほとんどがSGLT2によるものなのです。

健康な人では,このSGLT2の働きによって,血液中の糖のほとんどが細胞の中に取り込まれるため,尿に糖は排泄されません。ところが高血糖になると,SGLT2の働きを超えた分の糖が尿から排泄されてしまいます。“尿に糖が混ざる”という現象は,「糖尿病」という疾患名の由来でもあるわけですが,その現象はSGLT2の働きの限界を示すものとも言えます。この働きを逆手に取って開発されたのが,SGLT2阻害薬です。

SGLT2阻害薬はその名の通り,SGLT2の働きを阻害する薬剤で,SGLT2を介して糖の取り込みを阻害することで効率的に尿へ糖を排泄させ,血糖を下げています。これまでの糖尿病治療薬はインスリンをつくっている膵臓に作用し,インスリンを出すことによって血糖を改善するものでしたが,SGLT2阻害薬は,腎臓に作用する治療薬であることからまったく作用は異なっています。このように,SGLT2阻害薬は,「尿から糖を出す」という既存薬とは異なる作用メカニズムで血糖を下げる新しいタイプの経口糖尿病治療薬です。そのため,糖尿病が原因である糖尿病網膜症には,効果があるというわけです。

糖尿病網膜症は,糖尿病で血糖が高い状態が続くことにより起こる合併症で,糖尿病の三大合併症と呼ばれる代表的な合併症の1つです。長い期間,血糖値の高い状態が続くと,網膜(カメラでたとえるとフィルムに相当)に酸素を送っている細かい血管(毛細血管)が傷ついてしまい,視力障害を生じる疾患です。実際,SGLT2阻害薬は,既存薬よりも糖尿病網膜症の進行を抑えることが報告されています。さらにSGLT2阻害薬は尿から糖を出すという利尿作用があるため,糖尿病黄斑浮腫という疾患に対しても効果が期待されています。糖尿病黄斑浮腫は,前述したように糖尿病になると網膜の毛細血管が傷つくので,血管から漏れ出した血液中の成分が黄斑に溜まっている状態です。“黄斑”というところは,網膜の中でも最も重要な場所で,視力を司っている部位で,黄斑に血液中の成分が溜まると,視力低下やゆがみをきたしてきます。SGLT2阻害薬は,黄斑に溜まっている成分を取り除く可能性があるので,効果が期待されているわけです。

一方,加齢黄斑変性は,年齢を重ねるとともに網膜の下(血管の豊富な脈絡膜)に老廃物が蓄積するため,脈絡膜から異常な血管(新生血管)を生じてきます。その血管は非常にもろいため,破れたりすると,出血を起こし,視力障害をきたします。SGLT2阻害薬は異常な血管(新生血管)には効果がないため,加齢黄斑変性に対しては効果が出ないというわけです。

【回答者】

野間英孝 東京医科大学八王子医療センター眼科准教授

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