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食肉の生食や加熱不十分での摂取による感染性胃腸炎の診断・治療は?【PCR法により分離・同定後,ホスホマイシン,マクロライド系・キノロン系抗菌薬を投与】

登録日: 2017.09.14 最終更新日: 2025.09.20

山崎伸二 (大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻感染症制御学領域獣医国際防疫学教室教授/学長補佐)

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鶏肉,牛肉,豚肉の生食や加熱不十分での摂取による寄生虫疾患,感染性胃腸炎の診断,治療,予後について,文献も併せてご教示下さい。

(青森県 W)


【回答】

生や加熱不十分な肉を摂取して体調不良を起こした場合,患者の喫食情報,潜伏期や症状から病原体を絞り込みます。鶏肉はカンピロバクターやサルモネラに,牛肉は無鉤条虫,アジア条虫,住肉胞子虫,腸管出血性大腸菌,カンピロバクター,サルモネラに,豚肉は有鉤条虫,旋毛虫,アジア条虫,トキソプラズマ,サルモネラ,エルシニアに汚染されている可能性があります。

(1)細菌

①確定診断
感染性胃腸炎の場合,確定診断には,カンピロバクター(スキロー培地等),サルモネラ(クロモアガーサルモネラ等)や腸管出血性大腸菌(クロモアガーSTEC等)等をそれぞれの選択培地で分離・同定します。起因菌の同定には便検体から直接あるいは得られたコロニーからPCR(polymerase chain reaction)法で菌種特異的遺伝子を検出する方法があります。

②治療
抗菌薬治療は必ずしも必須ではありませんが,重症の場合あるいは下痢の期間や排菌期間の短縮を目的として,小児では,ホスホマイシンやマクロライド系,成人では,キノロン系やマクロライド系を用います。

腸管出血性大腸菌感染症には,ホスホマイシン,ノルフロキサシンが推奨されています1)。発症後3日以内に投与すれば重症化を防ぐことができるとの報告もあります。


③予後
カンピロバクターによる胃腸炎を発症した場合は,稀ですが,回復した数週間後にギラン・バレー症候群や反応性関節炎(ライター症候群)を,サルモネラによる胃腸炎の場合は,回復後数週間で反応性関節炎を発症することがあります。

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