昔は睡眠薬といえばBZDを選択しがちだったが,現在では図5のように様々な選択肢がある20)。

(1) 体内時計の乱れへのアプローチ
体内時計系については,海外旅行で起こる時差障害(jet lag)がわかりやすい例だろう。体内時計が,現地時間に合っていないという状態である。本来の睡眠の質や性状は変わらないため,現地時間に適応さえすればよいわけである。児童がスマホやゲームに夢中になり遅くまで起きて深夜3時くらいに寝つくと,朝11時くらいにしか起きられなくなる問題と一緒である。
日本時間の午前11時は,ドバイで生活していれば朝6時でちょうどよいのだ。しかし,日本の朝6時は,深夜3時に寝る人にとっては入眠3時間後であり,副交感神経が優位な時間帯のために,起床が困難になり起立性低血圧を起こしやすくなる。これを調整性自律神経障害としてα刺激薬などで治療をすることがあるかもしれないが,個人的にはまずは睡眠の時間を調整するためにスマホの時間制限とともに入眠時間を早めるべきだと考える。
昔風に言えば,大学生が麻雀やバイトなどで徹夜をすると,午前中の講義には行かないため,不登校,退学といった状況があったかもしれないが,これの子ども版だと思うと納得できる。ただし,子どもがスマホやゲームに熱中する背景には自閉スペクトラムやOCDなどのこだわりが強い性格背景や家庭環境のストレスがないかが鍵であり,行動変容につながらない問題の本質はここにあると思われる。
jet lagを筆頭に,眠くなるタイミングがずれてしまっているのを修正するのが,メラトニンを調整するタイプの治療薬である。ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬)は,たとえば,個人的にしばしば使うフルボキサミンが薬剤相互作用で禁忌であるため,使用時には注意が必要である。
