(2) 入眠困難・中途覚醒へのアプローチ
一方,睡眠サイクルはある程度問題がないという前提はあるが,寝つきが悪い入眠困難(多くは神経症的な問題だと思うが)に対しては,過去は短時間作用型のハルシオンなどのBZDと言われてきた。しかし,現在ではZ-drugと呼ばれる薬が非ベンゾジアゼピン系としてBZDの代わりに推奨されるようになってきた。
しょせんはGABA受容体に作用する薬剤であるので,個人的には第一選択薬とあまり思っていない。使用期間を1カ月以内と考えて使用し,非薬物療法を重視するのが大事である。結局のところ,実際には症例2のように非薬物療法を徹底する必要があり,睡眠サイクルを調整しながら,第6条の運動療法を進めるのを第一選択としている。
中途覚醒については,中間作用型などのBZDが過去には適応とされていたが,個人的にはこの部分はトラゾドンが良いと思っている。BZDのような依存性が少ないとされていて,飲んだり飲まなかったりしても,離脱症状がほぼ起こらない。
海外では不眠症薬として使用している実態があるが,AASMのガイドラインでは推奨をしていない21)。根拠を調べると,1998年の文献でトラゾドン50mgとゾルピデムを比較したもののみがあり,研究の質は低くその害は明確になっていない。そもそもAASMのガイドラインで,すべての睡眠薬に弱い推奨しか出せないほど,エビデンスのある研究はないのが実情であることには理解が必要である。
日本では,うつ病,うつ状態にしか保険適用がないため,個人的にはPHQ-9でうつ状態を評価して使用を検討するようにしている。これは図1 11)の考え方と同じである。他の睡眠薬と比べて圧倒的にコストが安いので,家庭医が推奨する妥当性の一因かと考えている。もう少し処方しやすい環境を整備すべきではないのかと思うところである。

2014年からオレキシン受容体拮抗薬が処方可能となった。これは入眠困難にも中途覚醒にも有用とされており,依存性や筋弛緩作用が乏しいため,高齢者でも安全に使用できることが良い点である。一方で,REM睡眠期を増やすため悪夢の副作用が問題になること,Z-drugよりも深睡眠を増やさず,高用量を使うと半減期が長いので持ち越し効果もあること,さらに,高額なことが難点である。
※この記事は,FOCUS「不眠症を一般医がみるときの留意点」の一部を抜粋・編集したものです。文献リスト等については,製品版を参照ください。
本編では,本記事の内容に加えて,実際の処方例や問診のポイントなども詳しく掲載しています。