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臨床経験を10年分積ませてもらったような感覚『たんぽぽ先生の在宅医療パターンブック 現場で迷わない26のケース対応』【書評】

登録日: 2026.09.15 最終更新日: 2026.09.15

市橋亮一 (医療法人かがやき理事長/総合在宅医療クリニック名駅院長)

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在宅医療を行うすべての人に読んでもらいたい一冊である。

在宅医療は,なぜ難しいのだろうか。それは,一つの「正解」が存在しないからである。患者さん本人の価値観や人生観に加え,ご家族の思い,生活環境,地域資源など,様々な要素をふまえながら,その人にとって最善の形を模索していかなければならない。本来であれば,一つひとつの症例に真摯に向き合い,時間をかけて考え抜くべきである。しかし,日々の診療やカンファレンスでは,経験豊富な医療者が集まっても答えを見出すことが難しい場面に,私たちは幾度となく直面する。

そのような在宅医療の本質的な難しさの中で,日本を代表する在宅医である永井康徳先生が,数多くの患者さんやご家族と向き合い,悩み,考え抜いた末にたどりついた原則と,それに基づく実践,さらには,患者さんやご家族との具体的な対話例までが惜しみなく盛り込まれているのが本書である。

読者は単なる知識を得るだけではなく,永井先生の思考過程を追体験し,「このような場面では,こう考え,このように言葉を選ぶのか」という臨床の勘どころを自然に身につけることができる。私自身,本書を読み終えたとき,「臨床経験を10年分積ませてもらったような感覚」を持った。それほどまでに,本書には長年の経験からしか生まれない知恵と実践が凝縮されている。

本当に素晴らしい一冊であり,在宅医療に携わるより多くの方々の手に届くことを願っている。

私自身も,当院の朝の抄読会で本書を取り上げ,スタッフとともに学びを深め,日々の在宅医療に生かしていきたい。

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