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なぜ,同じ『肺炎』でも病院の収益が数十万円違うのか?─CCPマトリックスを読み解く[研修医・専攻医のためのDPC超入門(4)]

登録日: 2026.08.25 最終更新日: 2026.08.25

高田史門 (医療法人純徳会田中病院院長)

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5 明日からできること─適切な分類のための記載

では,研修医として,明日から何ができるか。

第1回で「退院の解像度」,第2回で「病名の解像度」,第3回で「採血の解像度」を上げる話をした。今回は,「記載の解像度」を上げる番だ。

肺炎の患者さんを担当したとき,以下の3つを必ずカルテに記載する習慣をつけてほしい(表2)。

この3つを意識して記載するだけで,診療情報管理士が正確にコーディングでき,医療の実態が正しく記録に残る。

特に強調したいのは,A-DROPスコアの記載だ。多くの研修医は,市中肺炎の重症度評価としてA-DROPを「計算」はするが,それをカルテに明記していないことが多い。頭の中で「中等症だな」と思っても,カルテに「A-DROP 2点」と書かなければ,それは記録に残らない。

「記載は,診療の鏡だ」と私は思う。あなたが実際に行った診療を,正確に映し出すのがカルテの役割だ。実態を過大に書くのは不正だが,実態を過小に書くのも,また不正確なのだ。

冒頭の研修医は,しばらく考えてから,こう言った。

「先生,僕,これまで肺炎の患者さんを診ても,カルテには『肺炎』としか書いていませんでした。A-DROPは頭の中で計算していたけど,書いていなかった。副傷病も,『まあ既往歴の欄に書いてあるからいいか』と思っていました」

「多くの研修医がそうだよ。だから,今日その気づきを得られたのは,大きな一歩だ」

「これからは,A-DROPスコアも,副傷病も,処置も,きちんとカルテに書きます。それが,患者さんの医療を正確に記録することにつながるんですね」

私は頷いた。「その通り。そして,それが結果的に,病院を支えることにもなる」

6 「分類」もまた,誠実さの帰結

最後に,少し大きな話をしたい。

この連載で,私は繰り返し「誠実さ」という言葉を使ってきた。

第2回では,「コーディングは正直さが原則」と話した。実態より重く書くのも,軽く書くのも,いずれも不適切だと。

第3回では,「検査もまた,誠実さが原則」と話した。根拠のない採血は,患者にも病院にも不利益だと。

そして第4回。私は,「分類もまた,誠実さの帰結である」と言いたい。

CCPマトリックスは,一見すると「点数を上げるためのテクニック」のように見えるかもしれない。しかし,その本質はまったく逆だ。

CCPマトリックスが求めているのは,「あなたが実際に行った診療を,正確に記録しなさい」ということに尽きる。A-DROPスコアを評価したなら,それを書く。心不全を併発していたなら,それを書く。中心静脈栄養を実施したなら,それを書く。

正確な記録が,適切な分類を生み,適切な評価につながる。

これは,点数のためのテクニックではない。医療者としての誠実さそのものだ。そして,その誠実さが,結果として病院の経営を支え,ひいては地域医療を守ることにつながっていく。

「先生」と研修医が言った。「DPCって,最初は『お金の話』だと思っていました。でも,今は違う気がします。正確に診療して,正確に記録する─その当たり前のことを,ちゃんとやろうって話なんですね」

私は,思わず微笑んだ。第1回でDPCの「D」も知らなかった研修医が,ここまで来た。

「その理解で,完璧だよ」

「この次はね」と私は続けた。「いよいよ,その『正確な診療と記録』を,チームでどう実現するかという話をしよう。退院支援は,なぜ入院初日から始めるべきなのか─多職種連携の話だ」

研修医は,今度は迷いのない顔で頷いた。

院長のホワイトボード─今日のTake Home Message  

▶ 「肺炎等」(040080)は,年齢・重症度・副傷病・処置の組み合わせで52分類にわかれている

▶ この細分化の仕組みがCCPマトリックス(併存症・合併症・処置のマトリックス)。令和8年度では肺炎と脳梗塞が対象

▶ 肺炎の分類を左右する3要素は,①A-DROPスコア,②副傷病,③処置等2

▶ 同じ患者でも,これらの記載の有無で,14日入院で約7万5000円の差が生じうる

▶ それは「水増し」ではなく,実態を正確に記載したか,し忘れたかの差

▶ 記載漏れは病院全体で年間1000万円超の取りこぼしにつながりうる

▶ A-DROPスコアは「計算」するだけでなく「記載」する─記載は診療の鏡

▶ 分類もまた,誠実さの帰結。正確な記録が,適切な評価につながる

次回予告
第5回「なぜ,退院支援は『退院が決まってから』では遅いのか?」─ここまでは「医師個人」の視点が中心でした。次回は視点を広げ,多職種連携の話に入ります。退院支援,地域連携,そしてチーム医療─DPC時代の病院が,組織として何をすべきかを考えます。

【参考資料】

▶ 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定について. DPC/PDPS関連告示・通知.
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

▶ 日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2024作成委員会, 編:成人肺炎診療ガイドライン2024. メディカルレビュー社, 2024.

▶ 診断群分類点数表(令和8年度版)040080肺炎等
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html


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