第23回では,「成人教育」の考え方を紹介しました。成人教育について学んだことで,私は「なぜ制度を整えただけでは人が動かないのか」を理解できるようになりました。しかし,理由がわかっただけでは組織は変わりません。次に考えなければいけなかったのは,「どうすれば学び続ける職場になるか」ということでした。
「学びたい人の支援」から「自然と学びが起こる職場」へ
当院での初期の学習支援は,個人の意欲に依存する仕組みでした。本を読みたい人は読む,セミナーに参加したい人は参加する,といった考え方です。しかし,書籍購入手当制度を利用した人が1人しかいなかったこと(本連載第23回参照)からもわかるように,制度を整えただけでは,クリニック全体の学習にはつながりませんでした。
それまでは,当院は「学習を個人の努力にゆだねる職場」「学びたい人を支援する職場」でした。しかし,それではうまくいかないことに気づき,「自然と学びが起こる職場」をめざすことにしたのです。
「教える」ことが学びになる
まず取り組んだのは,スタッフが学びの担い手になる仕組みづくりです。講師をまねいて研修をするだけではなく,スタッフがテーマを決め,自ら講師となって他のスタッフに教える機会も設けました。
人に教えるためには,自分自身が内容を理解し,質問にも答えることができるようにならなければなりません。実際に講師を担当したスタッフは,それまで以上に深く学ぶようになりました。人に教える経験そのものが,学習の質を高めることを実感しています。
また,外部講師をまねく際にも,工夫を加えました。これまで数多くの講演会や研修会に参加してきましたが,講師の話を聞いただけで行動が変わったり,長く記憶に残ったりする経験は,それほど多くはありませんでした。一方で,自分で考えたり,参加者同士で意見を交わしたりした研修は,記憶に強く残っています。そのため,当院では,講義中心ではなく,ワークショップ形式の研修を重視するようになりました。実際,研修後にスタッフ同士で話題になったのは,講師のスライドではなく,その場で話し合った内容や,自分たちで考えたアイデアであることが少なくありませんでした。