開業医の組織マネジメントの勉強会で,「応募が来ない」「良い人材が見つからない」という悩みと同じくらいよく耳にするのが,「採用しても育たない」「なかなか主体的に動いてくれない」という悩みです。私は,長年クリニックを運営する中で,採用と育成は別々の問題ではなく,実は密接につながっていると感じています。教育効果のある人を見きわめて採用しなければ,どんなに教育に時間をかけても無駄になってしまいます。
しっかりと選考して採用し,きちんとしたやり方で教育すれば,人はいつでも変わりますし,いつからでも成長することができます。今回と次回の2回にわけて,教育によって人材がキャリアアップしつづけられる職場のつくり方について説明します。
クリニックの人材教育の難しさと重要性
医療を取り巻く環境は常に変化しています。診療報酬制度は改定のたびに大きく変わりますし,新しい治療法や薬剤,医療機器も次々に登場しています。社会情勢の変化も大きく,生成AIなどの新しい技術を活用するのが当たり前の世の中になってきました。このような状況にあって,私たちは学びつづけることが必要です。しかし,忙しいクリニックの現場では,日々の様々な業務に追われ,気がつけば,毎日の仕事をこなすだけで精一杯になっているところも多いと思われます。
院長としては,スタッフにもっと勉強してほしい,成長意欲を持ってほしいと思っているでしょう。一方で,スタッフからすると,毎日の業務だけで手一杯,しかも何を勉強すれば良いかわからないというのが本音かもしれません。この温度差は,多くのクリニックで生じているのではないでしょうか。
しかし,これを放置しておくべきではありません。優秀な人材ほど,自分自身の成長に敏感で,「ここにいてもこれ以上の成長はできない」「毎日同じことを繰り返しているだけ」と感じてしまうと,転職を考えはじめる人もいます。成長意欲のある人にとって,キャリアアップできる職場で働けることは,大きな魅力になります。学びつづける組織づくりは,人材育成のためだけにやるものではなく,成長戦略そのものだと私は考えています。