内科診療において,排尿症状の訴えはきわめて切実である。排尿の問題は,人間であれば誰もがその不自由さを想像しうる普遍的な苦痛だ。しかし,私は本書を読み,これまでの自身の対応が「二重の意味」で良くなかったと深く反省している。
第一に,泌尿器科医との並診が容易な環境に甘え,診療の核心を他科にゆだねきっていたこと。第二に,腎臓内科医としてのnature(本性)─「尿が出ることが良い」と思うゆえか,尿路閉塞などの急性疾患を除き,頻尿などの症状を「命に別状はない」と事実上黙認し,軽視する傾向にあったことだ。
この「黙認」は,痛恨の極みである。腎臓の生理学を紐解けば,ネフロン,集合管,尿管,膀胱,そして尿道に至る「流れ」が維持されてこそ,腎の本質が全うされることは自明である。また,高齢者は生理学的に「腎性尿崩症」の状態にあるとも言え,排尿問題は避けて通れない,生命の質に直結する課題なのだ。
たとえば,高齢女性の閉経関連尿路性器症候群(GSM)に対する処方である。本書では,下記のように紹介している。
「漢方薬の処方を継続しながら,エストリオール腟剤を1日おきに使用した。約1カ月後には,症状は改善した。腟剤の使用を拒む患者や,腟剤で症状が悪化する患者に関しては,エストリオール(0.5〜1mg)の内服を処方するが,効果発現は,腟剤より遅い」(保険適用:1回1錠/日〜1回1錠/週を腟内に挿入する)。(本書p95,96より)
本書の素晴らしさは,泌尿器科専門医の高度な知見を,非専門医でも外来ですぐに実践できる「ワザ」として昇華させている点にある。私自身,遅まきながら高齢女性の頻尿に対して,E3(エストリオール)腟剤を選択肢に加えるようになった。
「腎臓を守る」,つまり「全身を護る」とは,検尿所見やeGFRの数値のみを追うことではない。その出口までを診る・護ることである。本書を,すべての内科医・医療従事者に推奨したい。
