4 具体的にどのような食品を勧めるべきか
▪成人において1日あたり25〜29gの食物繊維の摂取が,様々な生活習慣病のリスク低下に寄与すると報告されている8)。一方,実際の摂取量とは乖離があるため,「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では,成人における1日の食物繊維摂取量は20〜22g以上(男性),18g以上(女性)を目標値として設定している(図2)12)。
▪近年の日本人の食物繊維不足の背景には,野菜や果物の摂取不足に加え,穀類摂取量の減少があると指摘されている。対策として,精製米に玄米や雑穀を混ぜる,精製小麦のパンだけでなく全粒粉のパンを食べる,などの主食の工夫が有効である。慣れない場合は,精製米1合に対して,玄米や雑穀を大さじ1杯程度加えることから始め,体調に応じて増量する方法が推奨される。
▪厚生労働省の「健康日本21(第三次)」では,1日の野菜摂取量の目標を350gと定めており,意識的な摂取が求められる。オクラやモロヘイヤ,山芋などの粘りのある野菜には水溶性食物繊維が,根菜やブロッコリー,きのこ類などには不溶性食物繊維が豊富に含まれる。偏りなく多様な野菜を組み合わせることにより,異なる種類の食物繊維やビタミン,ミネラルをバランス良く摂取でき,栄養面での相補効果が期待できる(図3)。
▪食物繊維の摂取目標値の根拠となった多くの研究は,食品由来の食物繊維を対象としている。そのため,サプリメントによる同等量の摂取により同様の健康効果が得られる保証はない。
MEMO 短鎖脂肪酸
短鎖脂肪酸は,炭素数2〜6の脂肪酸であり,代表的なものに酢酸,プロピオン酸,酪酸がある。主に大腸における腸内細菌が食物繊維を発酵分解することにより産生される。これらは宿主のエネルギー源であり,大腸上皮細胞の増殖や粘膜の分泌,水やミネラルの吸収に関与,脂肪合成の基質となるなど,栄養学的に重要な役割を担う。
近年,短鎖脂肪酸はGタンパク質共役型受容体(GPR41,GPR43など)を介して認識され,脂質や糖代謝,免疫応答の制御,炎症の抑制,摂食調節,エネルギー代謝調節など,多様な生理作用を示すことが報告されている。短鎖脂肪酸の産生量やバランスの変化は,肥満,糖尿病,炎症性腸疾患などと関連することが明らかになっており,腸内細菌叢とともに健康維持や疾病予防の観点から注目されている。
文献
1) Gill SK, et al:Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021;18(2):101-16.
2) Makki K, et al:Cell Host Microbe. 2018;23(6):705-15.
3) Kimura I, et al:Physiol Rev. 2020;100(1):171-210.
4) Sonnenburg ED, et al:Nature. 2016;529(7585):212-5.
5) Desai MS, et al:Cell. 2016;167(5):1339-53.e21.
6) Riva A, et al:Nat Commun. 2019;10(1):4366.
7) David LA, et al:Nature. 2014;505(7484):559-63.
8) Reynolds A, et al:Lancet. 2019;393(10170):434-45.
9) Eshak ES, et al:J Nutr. 2010;140(8):1445-53.
10) Kokubo Y, et al:Eur J Clin Nutr. 2011;65(11):1233-41.
11) 日本動脈硬化学会, 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. 日本動脈硬化学会, 2022.
12) 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書.(2026年2月閲覧)
[https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf]
(本稿は,脂質異常症診療の最前線で活躍する著者が,最新のエビデンスとガイドラインの考え方に基づいて解説した『新装改訂版 見直し!脂質異常症』(小倉正恒編)の一部を抜粋・編集したものです。)