2 食物繊維と腸内細菌の関連
▪食物繊維は,ヒトの酵素では消化できない多様な成分を含み,腸内細菌にとって重要な発酵基質となる。腸内細菌は,これらの食物繊維を発酵分解することにより,宿主が吸収可能な短鎖脂肪酸へと変換する。食物繊維の性質は,可溶性に加え,発酵性によっても異なる。ペクチンのような高発酵性食物繊維は,腸内細菌によって効率的に分解され,短鎖脂肪酸を生成するのに対し,セルロースのようにほとんど分解されない非発酵性食物繊維も存在する。また,その中間的な性質をもつ食物繊維も存在する2)。
▪腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸は,宿主において単なるエネルギー源として機能するだけでなく,細胞膜受容体を介してシグナル伝達物質として作用する。代表的な短鎖脂肪酸である酢酸,プロピオン酸,酪酸は,脂肪蓄積の抑制や,インスリン分泌促進,血圧調節などの代謝調節作用をもつ。また,免疫調節においても重要であり,T細胞の分化調節や,腸管腔内のpH低下を介した酸感受性の腸管病原菌の排除など,腸内免疫および腸内細菌叢の恒常性維持に寄与している3)。
▪ヒトおよびマウスを対象とした研究において,食物繊維の摂取量が低下することにより,腸内細菌叢の多様性が低下すること,特に粘膜分解細菌が増加することが報告されている4~7)。また動物モデルにおいて,食物繊維量の減少による腸内細菌叢の多様性の喪失は次の世代に受け継がれること,受け継がれた場合には,食物繊維の摂取量を回復させても元の状態に完全には戻らないことが示されている4)。
3 脂質異常症,動脈硬化との関連
▪185の前向き研究と58の臨床試験を含むメタ解析8)では,食物繊維摂取量が多いと総コレステロール値が低いことが報告されている。また,食物繊維摂取量の増加に伴い,心筋梗塞の発症および死亡,脳卒中の発症,循環器疾患の発症および死亡が減少することが示されており,1日25〜29gの摂取により最大の効果が認められた8)。
▪日本人を対象としたコホート研究においても,食物繊維摂取量は心血管疾患死亡リスクと逆相関すること9),特に女性では脳卒中発症リスクとも逆相関すること10)が報告されている。前者の効果は,総食物繊維摂取量のみならず,水溶性・不溶性食物繊維でも効果があるとされている。
▪総食物繊維,水溶性食物繊維を用いた多くのランダム化比較試験(RCT)のメタ解析において,総コレステロール,LDLコレステロール,non-HDLコレステロールが低下することが報告されている一方,HDLコレステロールや中性脂肪への明確な効果は認められていない11)。