食物繊維は「おなかの調子を整えるもの」というイメージがありますが,その働きはそれだけではありません。腸内細菌によって発酵されることで短鎖脂肪酸をつくるほか,十分な摂取はコレステロールの低下や,心筋梗塞・脳卒中のリスク低下とも関連しています。一方,日本人の食物繊維摂取量は十分とはいえません。本コラムでは,最新の研究結果を踏まえ,食物繊維にはどのような効果があり,どのくらい,何から摂ればよいのかなどを,腸内細菌や脂質異常症との関係も含めて解説します。
Point
▶食物繊維とは,ヒトの消化酵素で消化されない難消化性の食品中成分の総体で,水溶性と不溶性に分類され,一部は腸内細菌により発酵分解される。
▶食物繊維は腸内細菌により発酵され,短鎖脂肪酸を産生する。これらはエネルギー源に加え,代謝や免疫調節に重要な役割を果たす。
▶食物繊維の十分な摂取は,総コレステロール低下や心筋梗塞・脳卒中リスク低下と関連し,特に1日25〜29gの摂取で効果が大きい。
▶日本人の食物繊維摂取量は,成人男性20〜22g以上,女性18g以上が推奨されるが,目標値には届いていない。多様な穀類や野菜350gの摂取の工夫で改善できる。
▶健康効果は食品由来の食物繊維で検証されており,サプリメントでは同等の効果が得られる保証はなく,通常の食品からの摂取が望ましい。
1 食物繊維の役割
▪食物繊維とは,ヒトの消化酵素で消化されない難消化性の食品中成分の総体である。大きく水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分類され,その一部は腸内細菌により分解される発酵性食物繊維である(図1)。
▪水溶性食物繊維は,水に溶けて粘性の高い溶液を形成することにより,コレステロールや糖の吸収を抑制する1)。また,胆汁酸の合成促進や再吸収抑制を通じて,脂質代謝に影響を与える。代表例として,果物や野菜に含まれるペクチン,こんにゃくに含まれるグルコマンナン,オーツ麦に含まれるβグルカン,海藻類に含まれるアルギン酸などがある。
▪不溶性食物繊維は水に溶けず,便の量を増やして腸の蠕動運動を活発にし,排便を促す効果がある。代表例として,穀物・野菜・豆類に含まれるセルロースやヘミセルロース,カカオや種実類に含まれるリグニン,エビ・カニなどの甲殻類やきのこ類に含まれるキチンなどがある。