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なぜ,毎日の採血が病院を赤字にするのか?─「とりあえず採血」をEBMから考え直す[研修医・専攻医のためのDPC超入門(3)]

登録日: 2026.08.18 最終更新日: 2026.08.18

高田史門 (医療法人純徳会田中病院院長)

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5 明日からできること─「採血の解像度を上げる」

では,明日から具体的にどうすればよいか。

第1回で「退院の解像度」,第2回で「病名の解像度」を上げる話をした。今回は,「採血の解像度」を上げる番だ。

採血指示を出す前に,自分に次のように問いかける習慣をつけてほしい(表1)。

この4つを意識するだけで,採血の質が大きく変わる。「とりあえず」が「目的をもって」に変わる。

たとえば,80歳代女性の肺炎で,抗菌薬投与後3日目。解熱して食事も取れている。バイタルも安定している。前日の白血球も正常範囲。

ここで「毎日採血」を続ける根拠は,本当にあるだろうか? 「2〜3日後に効果判定の採血を1回」で十分ではないか?

そんなささやかな問いかけから,医療の質が,病院の経営が,患者さんの満足度が,少しずつ変わっていく。

冒頭の研修医は,その日の午後,自分が出していた採血指示を1つ1つ見直していた。

「先生,△△さんの定時採血,明日からは隔日にしようと思います。バイタルも検査値も安定しているので。何かあれば,そのときにスポットで出します」

私は深く頷いた。「いい判断だ。それが,DPC時代の臨床医の正しい姿勢だよ」

「この次はね」と私は付け加えた。「もう少し踏み込んだ話をしよう。同じ『誤嚥性肺炎』でも,君がカルテにどう書くかで,病院の収益が数十万円違ってくる,という話だ」

研修医は目を丸くした。「数十万円? そんなに?」

「その秘密は,CCPマトリックスにある。詳しく見ていこう」

院長のホワイトボード─今日のTake Home Message  

▶ 日常の採血(末梢血一般・生化学・CRPなど)はDPC上ほぼ包括。やればやるほど病院の持ち出しが増える

▶ 「とりあえず採血」には3つの落とし穴がある─経営,医学(偽陽性,臨床判断の鈍化),患者(苦痛,医原性貧血)

▶ 健常者でも20項目検査すれば約1項目が偽陽性,入院患者の20%が医原性貧血を発症する

▶ Choosing Wisely推奨:臨床的・検査値が安定した入院患者では,繰り返しCBC・生化学検査を行わない

▶ 「採血の解像度」を上げる4つの問い:目的・項目・頻度・結果で何が変わるか

▶ Blood Belongs in the Patient─血液は患者さんの体にあるべき。検査を減らすことは,患者を大切にする医療

次回予告
第4回「なぜ,同じ『誤嚥性肺炎』でも病院の収入が数十万円違うのか?」─第2回で軽く触れたCCPマトリックスを,本格的に扱う回です。重症度,副傷病,処置─これらの組み合わせで,DPC収益はこれだけ変わる。臨床医として知っておくべき「点数の仕組み」の核心に迫ります。

【参考資料】

▶ 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定について. DPC/PDPS関連告示・通知.
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

▶ Choosing Wisely Japan.
https://choosingwisely.jp/

▶ Society of Hospital Medicine:Five Things Physicians and Patients Should Question. 2013.
https://choosingwisely.org/

【文献】

1) Salisbury AC, et al:Arch Intern Med. 2011;171(18):1646-53.

2) AABB:Blood Belongs in the Patient:A Patient Blood Management Resource. 2021.

3) Thavendiranathan P, et al:J Gen Intern Med. 2005;20(6):520-4.

4) Corwin HL, et al:Crit Care Med. 2004;32(1):39-52.


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