『プライマリ・ケアで診る急性腹症』は,急性腹症という頻度が高く,かつ見逃しが許されないテーマを,プライマリ・ケアの現場に引き寄せて学べる実践的な一冊である。急性腹症の診療は,内科,外科,救急,産婦人科,画像診断など多領域にまたがり,診療ガイドラインの重要性は理解していても,多忙なプライマリ・ケア医にとって最初から体系的に読み込むことには少なからず障壁がある。情報量が多く,推奨の背景や適用場面まで丁寧に追おうとすると,日常診療の合間に手に取るには重たく感じられるからである。
本書はまさに最初の入り口として非常に優れた一冊となっている。総論で診療ガイドライン改訂の要点や見逃しやすい病態の整理を押さえた上で,妊婦,高齢者,認知症患者,服薬中の患者など,一般外来で迷いやすい状況に即した構成となっている。さらに,超音波,CT,MRIの使いわけ,見逃しリスクの高い疾患,common/uncommonを軸にした鑑別アプローチ,そしてフローチャートまで,一歩ずつ理解を深められる流れが実践に即している。加えて,本書は単なる知識の羅列ではないので,「どこを押さえれば臨床で役立つか」という視点を読者は持つことができるだろう。
本書では画像所見がふんだんに取り入れられており,読者が視覚的に理解しながら学べる点も大きな魅力である。急性腹症では,画像をどのように読み,どの所見を重視するかが実地診療に直結するため,この工夫は非常に有用である。さらに,冒頭では動画を活用した解説も用意されており,紙面だけでは伝わりにくい診療のニュアンスや考え方を補ってくれる。多忙な臨床医が効率よく学ぶための配慮が随所に感じられる。
効率的に学びたい若手医師にとっても,知識をアップデートしたい実地医家にとっても価値のある一冊であり,急性腹症診療の不安を軽減し,次の一歩を後押ししてくれる。プライマリ・ケア医,救急医,研修医などに広く薦めたい良書である。
