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FOCUS:〈その“繰り返す鼻炎”,本当に感昌?〉小児アレルギー性鼻炎を見抜く診療ポイント

登録日: 2026.06.19 最終更新日: 2026.06.19

川島佳代子 (大阪はびきの医療センター副院長/耳鼻咽喉・頭頸部外科主任部長)

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大阪はびきの医療センター副院長/耳鼻咽喉・頭頸部外科主任部長
川島佳代子
1989年徳島大学医学部医学科卒業。箕面市立病院,国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て,2017年より現病院勤務。2024年副院長兼務。耳鼻咽喉科領域におけるアレルギー疾患の診療を主軸に,アレルギーの重症化予防,患者報告アウトカム(QOL・労働生産性等)の研究に取り組んでいる。鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版,小児アレルギー性鼻炎診療の手引き,および口腔アレルギー症候群診療ガイドラインの作成委員。
私が伝えたいこと
◉小児のアレルギー性鼻炎(特にスギ花粉症)は低年齢化および有病率の増加がみられ,自然寛解が少なく成人期まで持ち越されやすい。喘息の増悪,睡眠障害,発育・学習への影響に加え,滲出性中耳炎や副鼻腔炎の合併により生活の質(QOL)を低下させるため,早期診断と早期介入が重要である。
◉小児では鼻腔が狭く,アデノイド増殖や口蓋扁桃肥大,感染症の合併も多い。また,鼻閉を自覚的に訴えにくいため,鼻こすり,鼻背のしわ,目の下のクマ,口呼吸などの身体的サインを見逃さないことが重要である。
◉初診時には,「アレルギー性鼻炎以外の疾患の鑑別」と「合併症の評価」を行う。問診と鼻内所見(蒼白・水様性 vs. 発赤・膿性)をもとに診断を進め,鼻汁好酸球検査や血清特異的IgE検査により原因抗原を同定し,確定診断につなげる。
◉治療は年齢および重症度に応じて,非鎮静性の第2世代抗ヒスタミン薬,鼻噴霧用ステロイド薬,抗ロイコトリエン薬を中心に選択し,必要に応じて併用する。重症季節性アレルギー性鼻炎では,思春期以降に抗IgE抗体療法も選択肢となる。
◉根治または長期寛解をめざす例では,アレルゲン免疫療法(AIT)(舌下免疫療法)を検討する。いずれの治療においても,保護者への疾患教育,環境整備(抗原回避),点鼻手技や服薬の継続支援など,アドヒアランスを意識した生活指導を併せて行うことが重要である。

❶ はじめに

近年,アレルギー性鼻炎の有病率は増加傾向にあり,特にスギ花粉症の増加が顕著である(112。また,スギ花粉症の低年齢化が進んでおり,2019年の調査では,5〜9歳のスギ花粉症の有病率は30.1%,10〜19歳では49.5%に達している(212。小児期発症例では自然寛解率は20%未満と低く,多くが成人期まで持続する。さらに,アレルギー性鼻炎は気管支喘息の増悪因子となるほか,睡眠障害による発育・学習への悪影響,滲出性中耳炎や副鼻腔炎の合併など,患児の生活の質(quality of life:QOL)を著しく低下させる要因となる。

本稿では,成人と異なる小児特有の病態や身体的特徴をふまえ,初診時の鑑別診断から,年齢・体重に応じた薬物療法,そして根治をめざすアレルゲン免疫療法(allergen immunotherapy:AIT)まで,日常診療で直ちに活用できる実践的な内容を記載する。小児アレルギー性鼻炎は,診断が遅れやすい疾患である。保護者が症状を体質あるいは反復する感冒ととらえることが多く,医療機関を受診しても急性上気道炎として扱われる例は少なくない。

実際には,小児では鼻閉が主症状となる例が多いが,本人が自覚しにくいため,口呼吸やいびき,睡眠の質の低下,日中のインペアードパフォーマンス(集中力低下)といった生活上の変化として現れることが多い。したがって,小児アレルギー性鼻炎の診療では,鼻症状そのものを子どもに聴取するだけではなく,生活状況の変化を手がかりに本症を疑う視点が重要である。

小児では鼻炎が軽症ととらえられやすく,適切な評価が行われないまま経過し,症状の悪化によって初めて問題化する例も少なくない。特に乳幼児では,保護者が鼻閉を自覚しにくく,くしゃみや鼻汁があっても反復する上気道感染症として扱われ,適切な評価が行われないまま経過することがある。

関連コンテンツ わかりやすい!【重症度別】花粉症治療薬の使いわけ:野村泰之著,A4判,16頁。多彩な症状に沿った処方ができるように,治療薬の選択を①初期療法,②軽症,③中等症,④重症・最重症の4段階に分けて解説。「内服薬」「点鼻薬」「点眼薬」「アレルゲン免疫療法」「生物学的製剤」「漢方薬」について,エビデンスやメカニズムに基づいた処方パターンを,図表を用いてわかりやすく示しました。
アレルギー性鼻炎は生活への影響が大きい疾患である
アレルギー性鼻炎は,重症化によりQOLを低下させ,睡眠障害や集中力低下を通じて仕事・学業の能率を損なう疾患である。経済的負担は医療費や薬剤費などの直接費用にとどまらず,欠勤・欠席に加え,出勤・登校していても生産性が低下する能率低下(プレゼンティーズム)による間接費用が大きい。間接費用の比率が高いことから,アレルギー性鼻炎は社会的損失を生む健康課題として行政でも取り上げられている。

❷ 小児アレルギー性鼻炎の特徴と成人との違い

小児のアレルギー性鼻炎は,解剖学的,生理学的,そして行動学的な特徴を理解することが診療の第一歩となる。小児では鼻腔が狭小であるため,成人では軽症と判断される程度の鼻粘膜腫脹でも著明な鼻閉をきたす。特にアデノイド増殖を伴う場合,アレルギー性炎症による鼻粘膜腫脹が加わることで鼻腔抵抗は急激に上昇する。その結果,患児は鼻呼吸が困難となり,口呼吸が習慣化し,睡眠障害を起こすこともある。

口呼吸の持続は咽頭乾燥や感染反復,睡眠の質の低下をまねき,日中の注意力低下や情緒不安定にもつながる。鼻腔は加温・加湿・除塵の機能を担うことから,小児アレルギー性鼻炎の治療目標は鼻症状の軽減に加え,安定した鼻呼吸の回復にある。このため,小児アレルギー性鼻炎の治療では,くしゃみや鼻汁の軽減に加え,鼻呼吸の確保を重視する。

(1) 解剖学的・生理学的特徴

解剖学的特徴として,小児では鼻腔が狭小で耳管が短く水平に近い形態をとること,さらにアデノイド肥大や口蓋扁桃肥大を生じやすいことが挙げられる。また,免疫機能が未成熟で感染症を合併しやすく,副鼻腔炎や滲出性中耳炎を併発する例が多いことを念頭に置く必要がある。

・鼻腔が狭小:小児の鼻腔は解剖学的に小さく,わずかな粘膜腫脹でも容易に鼻腔抵抗が増大し,鼻閉をきたしやすい。

・アデノイド肥大・口蓋扁桃肥大の影響:小児(特に就学前〜学童期)は生理的にアデノイドや口蓋扁桃が肥大している時期にあたり,これが鼻閉やいびき,睡眠障害を増悪させる。アレルギー性鼻炎の鼻粘膜腫脹とアデノイド肥大を合併すると,重度の鼻閉を引き起こすことがある(3)。

・免疫機能の未熟さと感染の合併:免疫機能が発達途上であるため,ウイルスや細菌感染を合併しやすく,アレルギー性炎症と感染性炎症が混在しやすい。

アデノイド,口蓋扁桃の肥大
アデノイド肥大(咽頭扁桃)は1〜2歳頃から起こり,3〜6歳頃がピークで,学童期後半にかけて退縮しやすい。口蓋扁桃肥大は3〜7歳頃に起こりやすく,思春期以降に縮小していくことが多い。

(2) 特徴的な症状と身体的サイン

小児では自覚症状の訴えが乏しく,特に鼻閉や嗅覚障害は見過ごされやすい。そのため,保護者からの聴取に加え,以下のような特徴的な身体的サイン(physical signs)を見逃さないことが重要である(43

アレルギー性会釈(allergic salute:鼻のかゆみのために手掌で鼻を押し上げる動作

・鼻こすり:鼻こすりの反復により鼻背部にしわができることがある

・眼こすり:頻回の眼こすりで眼の下にクマが生じる

・その他のサイン:頻繁な鼻すすり,口呼吸,顔しかめ癖,人中のばしなど

(3) 合併症

成人よりも周辺臓器への波及が多いのが特徴である(5)。

・副鼻腔炎:小児の副鼻腔炎は,鼻汁と咳が主症状であり,特に後鼻漏(のどへ流れる鼻汁)による夜間の咳が特徴である。

・滲出性中耳炎:耳管機能が未熟なため,鼻炎による耳管咽頭口の閉塞や炎症波及により合併しやすい。進行すると難聴を引き起こす。聞き返しなどが多くなれば滲出性中耳炎を疑い,耳鼻咽喉科の受診を検討する。耳鼻咽喉科では鼓膜を観察し,年齢に応じた聴力検査を行い診断する。

・気管支喘息:上気道と下気道は1つの気道であり,1つの疾患としてとらえるという「one airway, one disease」の概念通り密接に関連し,喘息児の多くが鼻炎を合併している。アレルギー性鼻炎は喘息の発症と増悪の危険因子であり,制御されていない中等症から重症のアレルギー性鼻炎は喘息のコントロールに影響を与える。

副鼻腔の発育
生下時にはほとんど含気はなく,篩骨洞は1歳から発育し,思春期に完成する。上顎洞は2~8歳で急速に発育し,17歳頃に完成する。前頭洞は6,7歳頃から,蝶形骨洞は3歳から含気がみられる。小児期は容積が小さいため,鼻炎から副鼻腔炎を発症しやすい4)

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