咽頭には口蓋扁桃,咽頭扁桃(アデノイド),耳管扁桃,咽頭側索,舌扁桃,孤立リンパ節などのリンパ組織が環状に存在し,ワルダイエル咽頭輪と呼ばれる。口蓋扁桃とアデノイドは,幼児期では細菌やウイルスの侵入防御の役割を持ち,免疫機能が確立した就学以降頃は退縮するため,生理的なサイズなのか年齢を考慮した評価を行う。扁桃組織の肥大に関与する因子は,個々の免疫能や素因・遺伝,炎症,内分泌,環境,薬物などがある。閉塞性睡眠時無呼吸症(obstructive sleep apnea:OSA)の合併や腫瘍性増殖では治療にあたる。
▶診断のポイント
扁桃肥大やアデノイドの肥大で上気道が閉塞するために,睡眠中のいびき・無呼吸,構音障害,摂食・嚥下障害などの原因となっていないかを見きわめる。さらに,扁桃炎歴,滲出性中耳炎歴を問診する。反復する扁桃炎では口蓋扁桃が徐々に増大することもある。アデノイド増殖症では鼻閉や滲出性中耳炎の原因となる。小児では,保護者からの鼻症状や開口癖の聴取も不可欠である。睡眠中のいびき・無呼吸は,患者が無自覚なことが多く,家族からの情報も重要である。
口蓋扁桃は舌圧子で舌を押し下げて視診を行う。肥大度は中咽頭腔への突出度で評価し,両側の口蓋扁桃が口峡の75%以上を占める場合は最重症度の扁桃肥大である(Brodsky分類)。アデノイドの評価には鼻咽腔内視鏡や画像検査(単純X線,CT,MRI)が必要である。アデノイドが耳管隆起や鼻中隔まで接するかどうかが評価のポイントとなる。
OSAは睡眠中のいびき・無呼吸,起床時頭重感,日中傾眠などに加え,小児では成長障害,胸郭変形,夜尿,注意力散漫などの心身の発育に影響し,成人では高血圧や心血管疾患を合併することがある。したがって,OSAを疑う場合は睡眠検査での確定診断が望ましい。
