2026年1月23日にWeb医事新報に公開された,北里大学医学部小児科学の本田 崇先生による「中学2年生女性の入院拒否~Fontan術後遠隔期の問題点~」という記事を拝読し,私は思わず「おー」と声を上げました。「患者・家族からの質問」「患者・家族への説明のポイント」,疾患概念の簡潔・明瞭な解説,そして「疾患のポイント」という構成の流れを目にして,鳥肌が立ちました。そして,居ても立っても居られず,即座に電子書籍を購入しました。
私は循環器に何のゆかりもない,腎臓内科上がりの老内科医ですが,最近は医学概論を研究しており,患者・医師関係における倫理に興味を持っています。その視点から見ても,本書の記述はまさに理想的な実践知の結晶と思え,こうして筆を執るに至りました。
私の循環器との関わりといえば,先天性心疾患では,30数年前の学生実習の際に,右左シャントの増加によりチアノーゼをきたして入院していた20歳前後の女性を拝見した記憶があるのみです。現在では,心房中隔欠損症(ASD)の成人例は循環器内科で定期受診をお願いする程度の医学的知識しかありません。
しかし,外来編の19例の記載は,循環器の素人である老内科医の私にも十分なインパクトがありました。また,成人への移行医療に関する記載は,同様に移行医療を扱うことの多い腎臓内科医としても,大いに役立つ内容でした。さらに,外科治療編を拝読した際には,学生時代に滋賀医科大学外科学講座第二外科の森教授の講義を受けたときの光景を思い出しながら,深く味わうことができました。
大人は子どもにはなりません。しかし,子どもは必ず成長し,大人に向かうものです。普段,循環器を専門に診ない内科医であっても読むべき医学書として,私は自信を持って本書を推薦します。
追記:本書を拝読して,小児の診療では,informed assent〔患者さん(未成年者)の賛同〕という概念があることを知りました。内科には,informed consent(同意)という概念がありますが,よく考えると,患者と医師の間で認識が同一であることはありえません(哲学的には,超越論的認識という概念はありますが)。そう考えると,同意よりも賛同・賛意,すなわち共感のほうが,患者中心の医療の実践により近いところにあるのではないかと感じました。門外漢の私が本書を拝読して得られた,もう1つの意義でした。
