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HAEを診断する:見逃さない検査と診断のポイント[やっくんが教える!HAE診断の3ステップstrategy(2)]提供:CSLベーリング株式会社

登録日: 2026.03.14 最終更新日: 2026.03.14

薬師寺泰匡 (薬師寺慈恵病院院長)

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遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema:HAE)を疑った場合,まず補体C4と補体C1インヒビター(C1-INH)活性を測定します。どちらも保険適用で外注可能な検査であり,C1-INH活性低下はHAEを強く示唆します。C4は全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)などでも低下するため,判定には臨床像と家族歴を併せて評価します。C1-INH定量検査は保険適用外であり,診断に必須ではありません。家族歴がない患者さんの25%は新規変異による発症であり,孤発例でもHAEは除外できません。C1-INH活性とC4は,発作時のみ低下することがあるため,HAEを疑う場合は繰り返し検査することが重要です。遺伝子検査も保険適用ですので,確実な診断をめざしましょう。

HAEを診断する意義

HAEは,発作時の迅速な対応と長期的な管理が生命予後を左右する疾患です。ステロイドや抗ヒスタミン薬が効かない浮腫を経験した際には,疑うだけではなく,確実に診断をつけることが患者さんの安全に直結します。腹痛発作のたびに胃腸炎と診断された結果,何度も,そして何年間も救急外来を受診した例もあります1)。また,HAE患者さんの約半数は一生のうちに1度は喉頭浮腫を経験すると言われます2)。そして,窒息で亡くなった方の平均年齢は40.6歳と報告されています2)。HAEは生産年齢層を直撃する,恐ろしい疾患です。しかし,早期に正確な診断を行えば,治療薬によって発作時に症状を抑えられるほか,発作抑制薬の長期投与により症状をコントロールすることも可能です。さらに,本邦ではHAEは難病指定されており,適切な診断により,患者さんが治療費の心配なく日常生活を送ることにもつながります。

診断の第一歩はC1-INH活性測定と補体C4

血管性浮腫(angioedema:AE)と考えられる諸症状を家族性に認めた場合には,まずC1-INH活性およびC4値の測定を行いましょう3)。正常境界にある人では,発作時のみ低値になる場合もあるため,疑われる場合には発作時を含め,繰り返しの測定が必要です。いずれも保険適用の検査であり,一般的な臨床検査センターでも外注可能です。C4は補体活性化に伴い低下するため,古典的補体経路が活性化されるSLEなどの自己免疫性疾患でも低下します。一方,C1-INH活性は,遺伝子変異または自己抗体による消費がなければ低下しないため,家族歴が明確な場合には,C1-INH活性低下をもって診断が可能です。なお,家族歴がないHAEも25%程度存在すると考えられており,必ずしも家族歴のみで除外診断はできない点に注意が必要です4)

STEP1で解説しましたが,C1-INHの量も機能も低下していればHAE1型,量は正常で機能だけ低下しているものがHAE2型とされます。両者を明確に区別するには,定量(抗原量)と機能測定をセットで依頼することが必要です。定量のみで判断すると,HAE2型を見逃すことになります。ただし,C1-INHの定量検査については保険適用外であり,診断に必須ではありません。家族歴とC1-INH活性低下をもってHAEと診断できますので,ご承知下さい。

後天性AE(acquired AE:AAE)との鑑別

中高年で新たにAEを発症した場合には,AAEを考慮します。AAEでは,C1-INHが自己抗体や消費によって低下し,HAEと同様にC1-INH活性の低下が起こります。前述の通り,家族歴がない新規孤発のHAEもありうるため,家族歴がない場合にはHAEとAAEの鑑別が必要になります。両者の鑑別には補体C1qの測定が有用とされており,AAEではC1qの低下を伴いますが,一方,HAEではC1qは正常のままです。ただし,HAEでもC1qが低下することがあるため,最終的には遺伝子検査が必要になります。AAEはリンパ増殖性疾患や自己免疫性疾患を背景に発症することが多く,診断後には基礎疾患の検索が求められます5)

C1-INH正常型HAE(HAE-nC1-INH)の登場

C1-INHの量も機能も正常であるにもかかわらず,家族性に同様の発作を起こす群,すなわちHAE3型が知られるようになり,現在ではHAE-nC1-INHとして分類されています。2000年代以降,複数の遺伝子異常が報告されました3)6)7)。代表的なものを表1に示します。なお,国内で遺伝子変異が確認され,確定診断に至っているものは,HAE-PLG,HAE-CPN1のみです8)9)

遺伝子検査の位置づけ

遺伝子検査は確定診断に役立ちますが,すべての施設で実施できるわけではありません。HAE1型と2型に関しては,まずC1-INH活性およびC4値の検査で異常を確認した上で,HAEかどうか確定診断ができない場合に専門施設へ依頼します。HAE3型については,既知の遺伝子変異のうち,F12,PLG,ANGPT1のみが保険適用となりますので注意が必要です。遺伝子検査を行ったにもかかわらず原因を特定できない家族性のAEは,その他の疾患の可能性を否定した上で,HAE-unknown(HAE-UNK)として扱うことになります3)

診断フローチャート

まずは,AEに気づいて頂ければと思います。そしてHAEを疑った場合には,C1-INH活性とC4値の測定を行います。その結果により診断への道筋が変わります(表210)。HAEの大部分がC1-INH活性低下タイプであるため,とにかくC1-INH活性を調べて下さい。

診断のピットフォール

ステロイドや抗ヒスタミン薬で軽快したからといって,浮腫の原因がアレルギーとは限りません。発作の自然軽快との区別が難しいため,再現性を確認しましょう。また,繰り返しとなりますが,家族歴がないことをもってHAEを除外しないで下さい。HAEの25%程度は新規変異による発症です。さらに,C4値が正常だからといって,HAEを除外しないで下さい。発作時や日内変動による偽陰性がありえます。加えて,腹痛のみの発作でも発症するため,皮膚の浮腫がないことをもってHAEを見逃さないで下さい。

画像診断

腹痛の原因精査の一環で,腹部エコー,腹部CT,消化管内視鏡検査が行われることがあります。特徴は,炎症を伴わない綺麗な粘膜下の浮腫です。これらを認めた場合には,ぜひHAEを想起して下さい(図1〜3)。

まとめ

HAE診断の基本は,繰り返す浮腫や腹痛などの症状,家族歴から疑うことです。そして,疑ったらC1-INH活性とC4値の測定を行います。HAE3型や,他のAEも含めた鑑別を意識し,必要であれば遺伝子検査も検討します。早期診断により,患者さんは救急受診を減らし,社会生活を取り戻すことができます。疑って終わりではなく,「診断して治療につなげる」。これがStep2のゴールです。

【文献】

1) Yakushiji H, et al:Intern Med. 2016;55(19):2885-7.

2) Bork K, et al:Arch Intern Med. 2003;163(10):1229-35.

3) Maurer M, et al:Allergy. 2022;77(7):1961-90.

4) Pappalardo E, et al:J Allergy Clin Immunol. 2000;106(6): 1147-54.

5) Castelli R, et al:Crit Rev Oncol Hematol. 2013;87(3): 323-32.

6) D'Apolito M, et al:J Allergy Clin Immunol. 2024;154(3): 698-706.

7) Vincent D, et al:J Allergy Clin Immunol Glob. 2024;3(2): 100223.

8) Yakushiji H,et al:Intern Med. 2023;62(13):2005-8.

9) Hida T, et al:Allergol Int. 2025;74(3):479-81.

10) 堀内孝彦, 他:補体. 2023;60(2):103-31.


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