
皆さん,いかがお過ごしですか。2月に入り,通常の心電図レクチャーに戻りましょう。
今回と次回の2回にわけて扱うテーマは,「ST上昇の鑑別診断」です。とは言っても,重要な“仕わけ”(鑑別)よりも,“どんな病態を考えるか”頭に思い描く――つまり,可能性のある病態を列挙して考えていくことに重点を置きたいと思います。ST部分(ST-segment)の“場所”(測定点)や“ズレ”(ST偏位)の測り方については,既にお話ししましたね(No.5293,第84回参照)。
▶ステミ(STEMI)だけじゃないぞ
今回フォーカスを当てるのは,ST異常の中でも,基線よりも高い位置にJ点が認められる「ST上昇」(ST-segment elevation)です。皆さんは,ST上昇と聞くと,『えっ? ヤバいよね,シンキンコーソクでしょ…!?』とおっしゃるかもしれません。それに対する返答は,もちろんYES―SETMI 〔ST上昇(型)心筋梗塞〕が最も注意を要することは間違いありません。臨床医にとっては,まさにキモとなる病態だと言えると思います。
でもね,ST上昇はSTEMIだけの“専売特許”じゃないんです。世の中には,ST上昇があっても心筋梗塞でない“STEMIモドキ”があり,我々の目を欺こうとしてきます*1。
心筋梗塞は後々個別に扱う予定でいますので,まずは“フェイク”なST上昇のほうを中心に解説したいと思います。なお,単純な病態の羅列では飽きてしまうため,実際の暗記に活かせる“mnemonic”(言わばアンチョコ)を用意してみました。
こういうのは,特に欧米の方々が得意なようで,ネット上で複数見つけることができます。
ただ,“満点”と呼べるものは見つけられませんでした。そこで,それらをオマージュしつつも,やはり個人的にアレンジした形で示そうと思います。以前から悩んでいましたが,(暫定ながら)完成版としては“ST-ELEVATION(S)”としました(図1)。なんと言っても,“そのまま”なのがよいですよね。割と親しみやすい形になっていませんか?
この組み合わせで用いるかの判断は,皆さんにお任せします。実際に使われなくとも,各項目の解説だけでもお役立て頂ける内容をめざそうと思います。
*1 海外では“(STEMI)mimics”という表現がなされるようです。“似て非なるモノ”のニュアンスです。