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米は生活必需品であるが,本書は仕事必需品である『肛門疾患診療のABC─ジェネラリストが知っておくべき基礎と実践』【書評】

登録日: 2026.02.02 最終更新日: 2026.02.03

松田圭二 (同愛記念病院外科部長)

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編著者の山口トキコ先生は,東京女子医科大学を卒業後,同大学大学院・同大学病院第二外科に進み,卒後わずか12年で現在のマリーゴールドクリニックを開業された。東京赤坂の地でたった1人,25年間地道に働いてきた女性が今,会員数6700名を超える日本大腸肛門病学会の理事として学会を引っ張っている。ちなみに理事長・理事合わせて19名の中で,女性は1人だけである。山口先生にはこれまで幾多の著作があるが,今回,日本医事新報社から積極的な依頼を受け,ご自身が信頼できる肛門科開業医と解剖学者を集め,満を持して完成に至ったのが本書『肛門疾患診療のABC─ジェネラリストが知っておくべき基礎と実践』である。

発売初日の2025年11月14日,この日は日本大腸肛門病学会学術集会の初日であったが,評者(私)は会場の書籍売り場で朝8時27分に本書を購入した。世界で最初の購入者である。今回書評を依頼されたが,自分のお金で買ったので,長所欠点すべて忖度なく感想を書かせて頂く。

本書の特徴を3つ挙げる。

1つ目は,色使いがきめ細かいことである。人間もそうだが,本も見た目は大事である。白黒の2色だけでは読む気がしない。本書は総論から始まり7章まであるが,各章でベースの色を明るい青や緑,紫などに統一している。日本医事新報社という名前からはお堅いイメージを想像するが,このきめ細かい色使いは,誰にでも優しく親切で物怖じしない編著者の性格に合わせたものだろうか。

2つ目は,著者らが現場で感じたことを記載していることである。最近はエビデンス偏重傾向があり,科学的根拠とか客観的データを示せとかなどと,個人の意見は普遍的ではないという風潮がみられるが,本書はそんな風潮にあえて背を向けている。私たちは目の前の,肛門疾患で苦しみながら横たわっている患者をなんとかしなければならないのである。ビッグデータを解析するだけでは患者は治らない。本書では著者らが日常診療で積み上げてきた経験や実感を述べ,専門家として正しい診察法と効果的な治療法を掲載してくれている。必要な参考文献も最小限にしているところも好感が持てる。多くの読者は著者らの率直な考えを知りたいのであって,ガイドラインのような本を求めてはいない。

3つ目は,memoとQ&A,コラムである。memoには最近のトピックスが取り上げられ,Q&Aには多くの読者が疑問に思うような質問と,それに対する的確な回答が掲載されている。コラムでは著者らの経験や意見が率直に述べられている。これらを読むだけでも楽しい。それにしても,本書にはありとあらゆる創意工夫が凝らされており,脱帽である。外科医だけではなく,肛門鏡を使わない消化器内科医,そして看護師,患者,どの立場の人が購入しても後悔しない一冊である。

2025年11月時点の米の平均価格は5kgで4521円となっており,本書とほぼ同額である。米は生活必需品であるが,本書は仕事必需品である。しかも米と違って,一度購入すれば永久に持っていられる「一生もの」である。本棚にしまうのではなく外来診察室で手元に置き,診察で困ったらすぐに見て頂きたい。カラフルで見やすく,図や写真も鮮明なので,患者へ病状を説明するときに最適である。

自分で購入したので編著者に忖度するつもりは一切なかったが,本書の欠点を見つけることはできなかった。


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