質問
毎日のようにAIについての話題を見聞きしており,自院の運営や業務にもAIを取り入れてみたいと考えているものの,具体的にどういった場面で活用できるのかがわかりません。クリニックの運営にAIを活用するための取り組みを教えて下さい。
回答
人手不足が進む一方で,診療報酬点数算定のための事務作業が増え,集患対策にもいっそう力を入れて取り組まなければならない……このような状況に対応するための取り組みとして,AIの活用が考えられます。AIは,主に医師の専門的判断を補助する「臨床支援」と,煩雑な事務・記録業務をサポートする「間接業務支援」の2つの領域で力を発揮します。
AIを活用することで,診療記録の作成にかかる時間を平均で約90%削減した事例があります。当社支援先である医療法人社団プラタナスの訪問診療では,オンコール対応時の会話をAIが自動でテキスト化し,指定フォーマットで記録しており,この仕組みを活用することで,業務効率化を実現しています1)。
1. DXとAIの関係
AIの議論に入る前に,まずDXとAIの関係を整理してみましょう。クリニックにとってのDX(=本連載第20回で定義した,個々のクリニックが実施する「クリニックDX」)とは,単なる電子カルテの導入やIT化にとどまらず,デジタル技術を活用して業務プロセス,および医療提供モデル自体を根本的に変革することを指します。その結果として,患者さんにとっての利便性の向上,医療の質の担保,人材不足・人件費高騰の時代における持続可能な医療経営の実現といった新たな価値を創出することができます。
AIは,このDXを実現するための強力な要素技術の1つです。つまり,AIはDXに包含されます。膨大なデータからの判断・予測・自動化といった領域において,AIは中核的な役割を果たします。クリニックのDXは,AIを持続可能な経営と質の高い医療提供のためのインフラとして位置づけることから始まります。