在宅医療の普及に伴い,急性期病院から「在宅で対応できませんか?」と相談されることが増えています。技術の進歩により,以前は病院でしか行えなかった高度な医療処置の多くが,在宅でも実施できるようになりました。このような状況において,我々在宅医は,病院から相談されたら何でも引き受けるべきなのでしょうか。
「できる」ことと「すべき」ことは必ずしも一致しません。在宅医療の本質は,病院医療の代替ではなく,患者さんやご家族の生活の質(QOL)を最優先に考えた医療の提供にあります。今回は,食道癌末期の患者さんのケースを通して,在宅医療における「困難な処置」への向き合い方と,病院との建設的な連携のあり方について考えたいと思います。
Case:食道癌末期の患者さんの在宅療養依頼
たんぽぽクリニックの近隣の急性期病院から,「自宅に戻りたいと希望する食道癌末期の患者さんがいるのですが,受け入れ可能でしょうか?」という相談がありました。
ハルアキさん(71歳,仮名)は,食道癌末期というだけでなく,この10年間に,直腸癌,膀胱癌,腎腫瘍などを患い,現在は以下の医療処置が施されている状態でした。
•尿路ストーマ •結腸ストーマ
•高カロリー輸液(約2000mL/日)
•腸瘻 •吸引 •胸腔ドレーン
もう治療はできず,緩和ケアをしていくという方針ですが,ハルアキさん本人がどうしても家に帰りたいと希望しているため,期間限定での退院を検討しているとのことでした。息子さんは遠方在住で,自宅では妻のユキコさん(仮名)と2人暮らしです。帰宅すれば,ユキコさんが主たる介護者となる状況でした。
