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■NEWS 地域フォーミュラリ全国展開へ2026年度改定に期待─フォーミュラリ学会・今井博久理事長

登録日: 2025.11.28 最終更新日: 2025.12.01

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■フォーミュラリは「処方を制限するものではない」

──全国展開に向けてクリアすべき課題にはどのようなものがありますか。

今井 最大の課題は、地域フォーミュラリに対する医療関係者の理解を深めることです。

現場の医師の一部に「処方が制限される」「処方権が侵害される」と懸念する声がありますが、それは全くの誤解です。地域フォーミュラリは、2023年の厚労省通知で「地域の医師・薬剤師などの医療従事者とその関係団体の協働により、有効性・安全性・経済性など総合的な観点から最適と判断された医薬品が収載されている医薬品集およびその使用指針」と定義されているように、地域の医師・薬剤師などが自分たちの使う薬を自分たちで決めるものです。

EBMに則って作成されるため、各地域のフォーミュラリは一致する部分が多くなりますが、あくまでも「推奨される医薬品リスト」ですので、医師の処方を制限するものではありません。

「地域間でそれほど差がないのであれば、ナショナルフォーミュラリでいいのではないか」という意見もありますが、地域ごとに処方事情が異なり、メーカーの供給力も違う中で全国一律のフォーミュラリを作成するのは非現実的です。地域単位で協議に基づいて決めていくのが現実的だと考えています。

■重要な役割は「患者アウトカムの改善」と「標準的な薬物治療」

──地域フォーミュラリは経済性も勘案して作成するということで「医療費抑制が主目的ではないのか」という懸念も根強くあります。

今井 これも大きな誤解です。医療経済的な側面ももちろん重要ですが、地域フォーミュラリの役割としてより重要なのは、患者アウトカムの改善と標準的な薬物治療を推進し、不適切な医薬品選択の幅を減らすことです。

医薬品供給をめぐっては、少量多品目生産体制などによる供給不安、自然災害発生時の供給停止などのリスクがありますが、地域フォーミュラリが全国展開されれば、これらのリスクは解消されていくと思います。

──2023年の厚労省通知では、フォーミュラリの収載薬について「経済性の観点から、後発医薬品を選定することが考えられる」と記載されています。地域フォーミュラリの医薬品リストは成分名で記載される場合が多いと思いますが、後発品がある場合は後発品を推奨することが原則となるのでしょうか。

今井 経済性を勘案しますので、学会で作成している「モデル・フォーミュラリ」では、推奨薬は原則後発品とし、先発品は入れていません。しかし、地域によっては必要に応じて先発品も含めて推奨するケースもあっていいと思います。


日本フォーミュラリ学会「モデル・フォーミュラリ」サイト(https://formulary.or.jp/model/)より

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