厚生労働省は11月6日、患者希望で長期収載品を使用した場合の選定療養について、現行は後発医薬品との価格差の4分の1相当とされている患者負担の引上げを社会保障審議会・医療保険部会に提案した。患者負担の引上げ水準については、後発医薬品との価格差の1/2、3/4または価格差の全額(1/1)─の3案を示した。
北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は、「(価格差を)全額患者負担とすることを大きな方向性とすべきだ」と主張。佐野雅宏委員(健康保険組合連合会会長代理)は選定療養の対象範囲の拡大も必要だとし、現行は対象外の医療上の必要がある場合について、「厳格な精査等、内容を整理して具体的な見直し案を示してほしい」と厚労省に要請した。こうした意見の一方で、供給不安が続いている中での患者負担引上げに慎重な意見もあった。
OTC類似薬の保険給付見直しについても議論した。保険給付からの完全除外を求める意見はなく、「選定療養で追加の自己負担を求めるか、償還率を変える方法についても具体的に検討すべきだ」(佐野委員)、「保険の枠内に置きつつ、保険外併用療養のように別途負担を求める仕組みも考えられるのではないか」(伊奈川秀和委員・国際医療福祉大学医療福祉学部教授)など、患者の負担増への配慮などから複数の委員が選定療養費制度の活用を提案。「医療用医薬品として医師が処方しているものを費用の問題でOTCの方に寄せることについて、国民の理解はなかなか得られないのではないか」(實松尊徳委員・全国後期高齢者医療広域連合会協議会会長/神埼市長)といった指摘もあった。
■OTC類似薬は対象範囲の設定も重要課題
OTC類似薬の範囲をどうするかという点も重要検討課題となっている。「類似のOTC医薬品が存在する医療用医薬品」が想定されているが、医療用医薬品とOTC医薬品は有効成分が一致していても、用法・用量、効能・効果、投与経路・剤形等が異なる場合があるからだ。このため渡邊大記委員(日本薬剤師会副会長)は、「単一の成分で同じ適応傷病名を持っているOTC薬がある医療用医薬品を交付する場合の保険給付のあり方をどうするかに絞って議論する必要があるのではないか」との見解を示した。