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被収容外国人を守る[先生、ご存知ですか(93)]

登録日: 2025.11.19 最終更新日: 2025.11.26

一杉正仁 (滋賀医科大学社会医学講座教授)

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増加する在留外国人

近年、在留外国人は増加しつつあり、令和6年末には約377万人と、総人口の約3.0%を占めました。平成元年には総人口の約0.8%にすぎませんでしたが、特にコロナによる影響が緩和した令和4年から急激に増加しています。それに伴い、外国人労働者も増加しており、令和6年末には約230万人に達しました。その背景には特定技能制度の創設などが関与しています。実際、在留資格別では、最も多いのが永住者で24.4%、これに技能実習が12.1%と続きます。国籍別では、中国が23.2%と最も高く、ベトナム(16.8%)、韓国(10.9%)と続きます。

さて、出入国管理及び難民認定法によると、外国人が日本国内に入国して滞在するためには、原則として在留資格を持つことが条件とされます。外国人の出入国管理や在留の管理、難民申請の受理・審査準備を行っているのが出入国在留管理庁(入管庁)です。正規の上陸手続きを経ないで入国した不法入国者や、在留資格の期限を超えて滞在している不法残留者などについては調査が行われ、必要に応じて退去強制手続が実施されます。

令和6年に、退去強制手続等の対象となった外国人は約1万9000人で、ここ3年間増加傾向です。令和6年における対象者の国籍はベトナムが最も多く、タイ、中国と続きます。これら3国で全体の約2/3を占めます。入管庁の関連施設には、退去強制手続中の外国人を収容する施設が設けられています。

被収容外国人の処遇

上記の理由で収容された外国人の処遇については、出入国管理及び難民認定法により定められています。すなわち、被収容者に保障されるのは、①保安上支障がない範囲におけるできる限りの自由、②一定の寝具および糧食の供与、③給養の適正と設備の衛生です。3点目の「給養の適正と設備の衛生」に関しては、糧食の種類やエネルギー量、毎日の運動の機会、入浴などの衛生措置、健康診断、医師の診察や常備薬、感染症の予防や応急処置などについて細かく定められています。たとえば、被収容者の宗教に応じて食文化の違いに配慮し、様々な種類の食事が用意されています。

また、常時運用されている収容施設には診療所が設置され、医師による診療が行われています。一方で、自傷行為などを行う被収容者に対しては、必要に応じて隔離措置が取られることがありますが、その際も医学的な観察が継続的に行われます。

被収容外国人の健康を守る

収容施設で勤務する医師は、収容された外国人の診察を通して、個人の健康維持にとどまらず、感染症の蔓延予防などにも貢献しています。収容された外国人が良好な健康状態で母国へ帰ることができるよう支援し、施設内の衛生状態を良好に保つため、日々尽力しています。

近年、収容施設における医療体制を強化すべきとの指摘があり、入管庁でも様々な対策が取られています。収容施設に勤務する常勤医は国家公務員としての身分が保証されていますが、兼業も可能です。また、非常勤医もいます。様々な文化的背景をもつ被収容者と接することは、国際社会への貢献にもつながります。被収容外国人は今後も増加することが予想されます。収容施設における医師の役割は、ますます大きくなっていくでしょう。


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