日本医師会の松本吉朗会長は11月6日の定例記者会見で、11月5日に開かれた財務省の財政制度等審議会財政制度分科会の議論における2026年度予算編成に向けた社会保障を巡る議論を受け、「人材流出と経営悪化により、医療介護提供体制が維持できなくなるというような危機感がまったく感じられないことは、極めて遺憾」と強く抗議するとともに、改めて医療現場の危機と診療報酬引上げの必要性を訴えた。
財務省は同分科会で、病院に比べ診療所が高い利益率を維持しているとした上で、病院への重点的な支援のため「診療所の報酬の適正化が不可欠」と主張した。診療所に焦点を絞って適正化を求めた点について松本会長は、「怒りでしかない」と強い口調で非難。無床診療所の経常利益率の中央値は2.5%、最頻値は0.0~1.0%というデータを示しながら、「地域医療を守る診療所は、一定の利益率がないと安定的に存在していくことが困難」と危機的状況を強調した。
■自己負担額増による受診抑制への懸念示す
財務省はかかりつけ医機能についても言及、患者の医療機関を限定する登録制が「あるべき姿」と主張した。これに対し松本会長は「患者の医療へのアクセス権、医師を選ぶ権利を阻害する提案。国民・患者は自分の行ける医療機関が限定され、かかりつけ医を固定されるような提案を決して望んではいないと思う」と反論。その上で、かかりつけ医機能は「地域を面で支えるものであり、この方向性に沿って完成形として近づけていくべき」との考えを示した。
このほか松本会長は、受診時定額自己負担の導入やOTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しについても触れ、「自己負担を引き上げることで受診をためらわせるような施策は容認できない」との姿勢を示した。

財務省の主張に憤りを見せる松本日医会長