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倦怠感を訴えるCKD患者×補中益気湯[漢方スッキリ方程式(104)]

登録日: 2025.11.05 最終更新日: 2025.11.10

畝田一司 (福島県立医科大学会津医療センター漢方医学講座准教授)

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本邦には推定2000万人の慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者が存在し,これは成人の約5人に1人に相当する1)。CKD患者は多彩な愁訴を呈することが多く2),その診療には漢方医学的視点が有用である。本稿では,倦怠感を主訴とするCKD患者に対する補中益気湯の運用を概説する。

CKD患者は倦怠感を抱える頻度が高い

CKD患者は保存期,透析期を問わず倦怠感を訴える頻度が高い3)。西洋医学的治療で不十分な場合,漢方薬は有力な選択肢となる。進行期CKDでは腎性貧血などの併発症とともに,漢方医学的な虚証の傾向が強まり,黄耆を含む補剤の漢方薬が適応となることが多い。

口訣に基づく補中益気湯の運用

補中益気湯は黄耆と人参を含む参耆剤であり,気の補充が必要な陽証,虚証の症例に適する。CKD診療においても倦怠感に広く活用できる。津田玄仙が記した口訣によれば,四肢のだるさに加え他の1~2症候を伴う場合,補中益気湯の適応が検討される()。

効果判定の重要性:漫然とした投与は避ける

倦怠感に用いる漢方薬は多岐にわたり,特に冷えの訴えが顕著な症例では,補中益気湯の治療効果が不十分となる可能性がある。CKD患者はポリファーマシーが問題となりやすく4),不適切な漢方薬の使用はその一因となり得る。

漢方薬の治療効果判定は1カ月以内に評価可能な場合が多い。効果不十分な場合には,治療方針の再考や漢方専門外来への紹介を行うことが望ましい。


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