医療法人立の病院、診療所の2024年度の医業利益率、経常利益率は平均値・中央値とも23年度に比べて低下したことが、厚生労働省が10月30日の中央社会保険医療協議会総会に報告した分析データで明らかになった。診療側は、医療機関経営は過去に例のない危機的状況にあるとして、改めて診療報酬上での手厚い支援を要望。支払側は病院と診療所の経営状況には格差があるとし、メリハリのある対応を求めた。
分析には医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)や総務省の「地方財政状況調査」のデータを用いた。MCDBは25年7月末までに24年度決算情報の提出があった医療法人が分析対象となっている。
医療法人立病院の24年度の平均医業利益率は、一般病院▲1.0%(中央値▲0.8%)、療養型病院0.3%(▲1.1%)、精神科病院▲1.7%(▲2.6%)。平均経常利益率は、一般病院▲0.0%(0.1%)、療養型病院1.8%(0.3%)、精神科病院0.0%(▲0.6%)─となった。23年度と比べると、全病院種別で医業利益率、経常利益率は平均値・中央値ともに悪化した。
一般病院は、収益の増加以上の費用(主に材料費や給与費)の増加、療養型病院と精神科病院は収益の減少に加え、費用が増加したことが経営悪化の主な要因。自治体病院は医業費用が医業収益を上回って伸びたことで利益率が低下し、24年度の医業利益率は▲13.6%、経常利益率は▲7.8%となった。
一方、医療法人立の医科診療所の24年度の平均利益率は、医業利益率では無床4.5%、(中央値1.6%)、有床2.7%(▲0.1%)、経常利益率では無床5.8%(2.9%)、有床4.3%(1.3%)─となった。無床、有床揃って前年度から医業利益率、経常利益率が平均値・中央値とも低下。医業収益が減少する中、医業費用が増加したことで利益が縮小し、医業利益が赤字の施設割合も軒並み拡大した。
■診療側は一律の支援を要請も、支払側はメリハリのある対応を主張
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「多くの病院、診療所が自助努力では太刀打ちできない経営困難に直面している」と危機感を示し、「物価、賃金の上昇に見合った診療報酬上の高い評価を強力に推し進め、実現するしか選択肢がない」と訴えた。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は診療所の利益率はプラスであるなど病院、診療所の経営状況には格差があるとの見方を示し、「一律の対応ではなく、経営状況の格差を踏まえたメリハリのある対応が必要だ」と主張した。