厚生労働省は10月23日の社会保障審議会医療保険部会に、次期2026年度診療報酬改定の基本方針の4つの基本的視点のうち、「物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応」を重点課題に設定することを提案した。この日の部会には、基本的視点を踏まえた具体的方向性などの記載案も示された。
厚労省の提案によると、視点1の「物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応」の具体的方向性では、物価高騰に伴う医療機関の諸経費増加を踏まえた対応や、必要な処遇改善等を通じた医療従事者の賃上げ・人材確保の取り組みが急務だと指摘。具体的方向性の例として、医療機関等が直面する人件費、委託費や医療材料費等といった物件費の高騰を踏まえた対応と賃上げや業務効率化・負担軽減の業務改善による医療従事者の人材確保に向けた取り組みを提示した。後者の施策には、医療従事者の処遇改善やICTの利活用推進に加え、診療報酬上求める基準の柔軟化も盛り込んだ。
基本的視点の残り3項目には、①2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進、②安心・安全で質の高い医療の推進、③効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上─を据える。
これらの具体的方向性の例は、「『治し、支える医療』の実現」「かかりつけ医」「かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価」「後発医薬品・バイオ後続品の使用促進」「OTC類似薬等の薬剤給付のあり方の検討」など。
重点課題に関する厚労省の提案について佐野雅宏委員(健康保険組合連合会会長代理)は、「4つの視点はいずれも密接に関係する重要なテーマであり、どれか1つを重点課題とすべきではない」と主張。島弘志委員(日本病院会副会長)は、「診療報酬が現在の支出、経費(の増加)に対応できていないことが一番の問題」とした上で、「視点1に関する部分はきちんと遂行していただきたい」と念を押した。
■11月下旬の医療保険・医療部会に基本方針の骨子案を提示予定
10月27日の社保審医療部会でも重点課題等を巡り審議が行われた。11月下旬には両部会にこれまでの議論を反映させた骨子案が提示される予定。基本方針の決定・公表は12月上旬となる見通しだ。