医療経済・政策学者の二木立氏(日本福祉大学名誉教授)は10月17日、神奈川県保険医協会主催の研究会で講演し、10月21日の首相指名選挙で首相への選出が確実視されている高市早苗自民党総裁の医療政策について「総裁選5候補中一番マトモ」「(社会保険料引下げを主張する)日本維新の会などと異なる」との見方を示した。
「今後の医療と医療政策を俯瞰的に考える」と題した講演で二木氏は、高市氏が総裁選で掲げた「物価高・賃上げを反映して診療・介護報酬の見直しを前倒しで行う」などの公約を紹介し、「これは日本医師会も病院団体も保険医協会も大賛成だと思う。ここまではっきり書いた候補は高市さんだけ」と指摘。
社会保険料についても「中低所得者層の負担(逆進性の高い社会保険料の負担増)を軽減」という表現を使用し「絶対額を下げるとは言っていない」とし、引下げを主張する日本維新の会などとは考えが異なることに注意を促した。高市氏の医療政策がとみに充実した背景には「この分野のブレーン」の存在があるとの見方も示した。
■維新の公約と高市氏の公約「水と油」
二木氏は、自民と連立協議を進める維新の公約と高市氏の公約は「水と油」であり、自維連立政権が誕生しても、維新が掲げる「医療費年間4兆円削減」「現役世代の1人当たり社会保険料負担年間6万円軽減」などの政策が「そのまま通ることはないと思う」と指摘。
その一方で、「昔から政局は一寸先は闇と言うが、今後の政局は分からない」とも述べ、高市内閣が安定多数の獲得を目指して年内か年明けに解散する可能性もあり、予断を許さない状況は続くとの見通しを示した。
■賃金・物価上昇対応で「1点単価変動制」の検討を
講演の中で二木氏は、賃金・物価の上昇に対応可能な診療報酬改定の新たな仕組みの選択肢の1つとして「1点単価変動制」も検討すべきとの考えも示した。「1点10円を固定したままだと厚労省が恣意的にやってしまう。賃金・物価上昇に対応するなら単価を変え、点数は技術進歩、技術の難易度に応じて上げるのがいい」と提唱した。
高市総裁の医療政策を論じる二木氏(ライブ配信の映像より)
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