2025年7月の参議院議員選挙で躍進した参政党は、(健康・医療)政策に「終末期の延命措置医療費の全額自己負担化」を、国政政党として初めて掲げました。私は、これについて「朝日新聞」「毎日新聞」等から取材を受け、その問題点を指摘しました(1番詳しいインタビューは「医療記者、岩永直子のニュースレター」2025年7月10日)。
選挙後、参政党についてのたくさんの論文・記事が発表されましたが、同党の(健康・医療)政策を分析したものはありません。そこで、本稿では、「参政党の政策」の第2の柱「食と健康・環境保全」中の(健康・医療)政策を包括的・批判的に検討します。それにより同党の政策の特異性を示すとともに、他の野党─日本維新の会や国民民主党だけでなく、立憲民主党─とも共通している政策もあることを明らかにします。
2024年衆院選までは医療にほとんど触れず
その前に、参政党は2024年10月の衆議院議員選挙までは、医療政策にはほとんど触れていなかったことを簡単に指摘します。
2024年6月に出版された『参政党ドリル』(神谷宗幣編著、青林堂)は、同党の「目指す国のあり方と政策」を示した本です。しかし、具体的な医療政策は書いておらず、「無駄な医療費を削減」「健康や予防医療を考えて、結果として無駄な医療費をかけない」と抽象的に書いているだけでした(152-153頁)。「この問題に関しては、現役世代と高齢世代が対立するのではなく、問題の本質を見極めた上で協力して解決の手段を導き出すことが可能」と、しごく真っ当な主張もしていました(187頁)。
参政党はそれまでは「反ワクチン」の先鋭的な主張や行動を売りにしていましたが、本書では、「当初からワクチン接種に慎重な姿勢をとり続けてきた」と主張(弁明?)しました(182頁)。『参政党ドリル』の包括的評価は「二木立の医療経済・政策学関連ニューズレター(通巻254号)」(9月5日配信、26-27頁)で行いました。
衆議院議員選挙の「参政党公約2024」では、「消費税減税と社会保障の最適化により国民負担率に35%上限のキャップをはめる」と、日本維新の会や国民民主党と同様の主張をしましたが、医療政策に関しては、「対症医療から予防医療に転換し、無駄な医療費の削減と健康寿命の延伸を実現」と抽象的に述べるだけでした。