◉呼吸器内科診療において頸部・胸部の診察はきわめて重要である。
◉頸部の呼吸補助筋の評価は生理学的な異常の予測につながる。
◉頸静脈では呼吸性変動に着目する。
◉胸部聴診では吸気と呼気をしっかり意識して雑音を聴取する。
◉吸気に聴取されるcracklesをphaseにも留意して評価することで,病態生理の推定が可能になる。

❶ はじめに
臨床に携わる医師にとって,患者の問題を抽出する過程における身体診察の重要性は高い。本稿では呼吸器疾患における身体所見の中で,頸部と胸部での所見の取り方について具体的に述べる。
❷ 頸部の診察
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)では呼吸補助筋である胸鎖乳突筋の肥大がみられることがある(図1)1)。20 pack-year以上の喫煙歴があり労作時呼吸困難がある患者で,胸鎖乳突筋をチェックし肥大があれば呼吸機能検査を施行してCOPDの診断をする。急性期には胸鎖乳突筋の使用も視診でわかるので(動画1),呼吸困難の原因を解明し速やかに対応する。肥大は慢性の病態を反映し,使用は急性期の呼吸の負荷を意味する。
