質問
受付スタッフが突然退職しました。本人はメンタルが限界だったようで,今後このようなことがないように対策を講じたいと思っています。クリニックスタッフのメンタルヘルス対策について,どこから着手すれば良いでしょうか?
回答
まずは「最近どう?」「疲れてない?」といった声かけから始めてみましょう。簡単なストレスチェックを実施したり,地域の相談窓口とつながったりすることも効果的です。「何かあったら話せる場がある」という安心感が,離職や不調の予防につながります。
医療・福祉業界では,メンタルヘルスの不調による退職が発生した事業所の割合が12%にのぼり,全業種平均を大きく上回っています1)。特に小規模なクリニックでは,スタッフ1人の離職が診療体制や運営全体に深刻な影響を及ぼすこともあります。予防策として,早期の相談体制の整備や,日常的なメンタルケアの実践が非常に重要です。
医療・介護従事者におけるメンタルヘルス不調の問題は,職場規模や職種を問わず,全国で表出しています。厚生労働省の調査1)では,メンタルヘルスによる退職者がいた事業所が,全業種では6.4%であったのに対し,「医療,福祉」産業では12%となっており,同分野でのメンタルヘルス対策は喫緊の課題であると言えます。
小規模なクリニックでは特に,スタッフがメンタルに不調を抱えて働けなくなると,診療体制全体に影響を及ぼします。しかし,「人数が少ないから相談体制の構築・整備は無理」「メンタルのことは自己管理してもらうしかない」といった無意識の前提が根づいている現場も少なくありません。そういった管理体制では,不調の“予兆”を見逃し,結果的に人材の流出やサービスの低下をまねいてしまいます。
大切なのは,クリニックの規模の大小にかかわらず,「困ったときに話せる」「少し立ち止まれる」環境があることです。それが,スタッフの安心感とエンゲージメント(職場への愛着)を育み,離職を防ぎ,何より「良い医療」を支える土台になります。以下では,小規模なクリニックでも無理なく始められるメンタルヘルスの相談体制の整備について,現実的な方法と外部との連携,段階的な導入のポイントを解説します。