保険医に対する指導・監査・処分の改善を目指す健康保険法改正研究会(共同代表:井上清成弁護士、石川善一弁護士)のシンポジウムが8月31日、適時調査への対応をテーマに松山市内で開かれた。講演した京都府保険医協会の花山弘事務局長は、最近の事例をもとに適時調査で指摘されやすいポイントなどについて解説した。
医療機関が診療報酬の施設基準に適合しているか確認するために行われる適時調査は、新型コロナ拡大の影響でいったん中止されたが、2022年度から再開し、2024年度診療報酬改定以降本格稼働している。
■「人員基準」などを満たすことが重要─京都府保険医協会・花山氏
花山氏は、適時調査の最大の問題は、届け出た施設基準に適合しないことが判明した場合に「自主返還」という経済的ペナルティー(返還事項)を受けることだとし、それを避けるためには、線引きが明確な「人員基準」「数値の基準」「専用施設」「具備すべき備品」の4つは満たしている状態を担保することが重要と指摘。
「人が足りているか、平均在院日数が収まっているか、部屋があるか、物があるかは白黒がはっきりつく。これでアウトとなると返還事項につながる可能性が高くなる。特に自主返還金額が大きい入院料は要注意」と呼びかけた。
花山氏は、指摘されやすいポイントとして①入院基本料関連、②看護業務関連、③入院料7基準(入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策、栄養管理体制、意思決定支援、身体的拘束最小化)─などを挙げ、これらは2023~2024年度の適時調査でも京都府内の多くの病院で指摘されたことを紹介。
今後は、入院ベースアップ評価料に関して「病院における対象職員の給与総額等の変化が1割以上となった場合に区分の変更を行っていなかった」といった指摘も増えてくるとの見方を示した。
■適時調査でも弁護士帯同が有効─井上弁護士
シンポジウムでは、共同代表の井上弁護士も適時調査への対応方法について講演した。
井上氏は「厚労省は個別指導と全く同様に、適時調査への弁護士帯同を認めている。録音もOK」と述べ、自らの実績として、交渉により自主返還金額の大幅な減額、自主返還なしに至った事例を紹介。
「適時調査では『高いから安くしろ』『こんなに取られたら潰れる』は通用しない」と注意喚起し、適時調査の臨場での講評の直後から対策を立てて対応し、弁護士を代理人として厚生局と交渉を開始する方法が有効とした。