厚生労働省は8月27日の中央社会保険医療協議会総会で、医療法人立病院の2023年度の医業利益率が平均▲0.7%となり、赤字の病院が半数を超えるという分析結果を報告した。
医療法人経営情報データベースシステムなどを活用して23年度収支の状況などを分析した。医療法人立の病院をみると、医業利益率は平均値▲0.7、中央値▲0.9%といずれもマイナス。医業利益が赤字の病院は全体の55.2%を占める。特に200床以上の一般病院は医業利益率、経常利益率ともマイナスだった。
機能別では急性期に分類される病院の医業利益率(平均値)が他の分類よりも低い傾向にあり、高度急性期は▲2.3%、急性期A(「急性期一般1」の届出病床50%超)は▲2.7%、急性期B(「急性期一般2〜6」等の届出病床50%超)は▲2.5%だった。地域分類別の分析では全分類で医業利益の赤字病院割合が5割を超え、所在地に関係なく、病院の経営が厳しい状況にあることが伺えた。
病院のみを経営する医療法人の現預金回転期間の中央値は3.0カ月と短く、約4割の法人で債務償還年数がマイナスとなっている状況も明らかになった。自治体病院や大学病院も収益の増加以上に費用が伸びたことが原因で収支が悪化した。
一方、医療法人立の医科診療所の医業利益率は平均値6.9%、中央値4.1%となり、医業利益が黒字の診療所の割合は66.6%だった。ただ、有床診療所の利益率は医科診療所全体や無床診療所と比べると低く、有床診の約半数で医業利益が赤字となっていた。
■診療報酬や補助金による緊急支援がなければ医療崩壊は目前―診療側
分析結果を受けて診療側委員は、「診療報酬や補助金による大幅な支援を緊急に手配しないと深刻な医療崩壊が目前に迫っている」(江澤和彦委員・日本医師会常任理事)、「病院の努力で患者が増えて収益は上がったが、経費が(収益以上に)増えて赤字幅が広がっているのが現状。これはもう構造的におかしいとしか言いようがない」(池端幸彦委員・日本慢性期医療協会副会長)などと窮状を訴えた。
これに対して支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は病床規模が大きいほど経常利益率のマイナス幅が縮小することなどから、「(経営安定化のためにも)病院の再編統合や医療機関機能の適切な選択を推進する方向で診療報酬にメリハリをつける必要がある」との見方を示した。