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浮動感が主体のめまい×(苓桂朮甘湯+五苓散)[漢方スッキリ方程式(88)]

登録日: 2024.07.10 最終更新日: 2025.09.20

長井 篤 (島根大学医学部内科学第三(脳神経内科)教授)

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めまいは,救急外来や一般外来で頻繁にみられる症候であり,その性質は回転性(Vertigo),浮動性(Dizziness),失神性(Faintness)の3種類に大別される。多くの病態や疾患が“めまい”を引き起こすことが知られているが,漢方薬が非常に有効な領域であり,病態と効能を表す概略図()を提示する。

めまいの背景にある水代謝異常を捉える

めまいの原因として水分布の異常を知ることが重要である。漢方では,回転性めまいは蝸牛の水毒,浮動感は上半身の水毒,失神性は全身の水毒と捉えることもできる。舌,胃部振水音,下肢のむくみなどで水毒の有無を見極め,水毒を治する沢瀉,茯苓,朮などの生薬を含む漢方薬を使用する。めまいが遷延して,気の異常のみ,すなわち心因性による異常が持続していることがある。その場合には気の異常を治する配合薬を用いる(参照)。

原田病で髄液の免疫反応が亢進し,ステロイド治療により体に水が貯留しやすい状態であった患者のめまいを典型例として取り上げた。眼振や頭位めまいはなく,立位や歩行時の浮動性めまいであったことより,水滞が上昇していると考え,苓桂朮甘湯を投与したところ速やかにめまいが消失した。苓桂朮甘湯は,の3つのタイプのめまいおよびそのオーバーラップした症状に効果が期待できる漢方薬で,自律神経失調症による立ちくらみにも適応できる。利水効果をさらに期待する場合に五苓散を追加して用いる。


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