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いやはや、ホンマに…[下] [なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(73)]

登録日: 2016.09.08 最終更新日: 2025.09.20

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

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メールの宛先に『ハゲ(ナカノ)』と書いてよこした狼藉学生が、来なくていいのに黒スーツで教授室まで謝りにやってきた、というのが、前回のあらすじ。

その日は、英文論文の仕上げに入っていた。それほど能力が高くないので、英文の論文は、頭のコンディションの善し悪しによってはかどり方が全く違う。その日は論文の神様でも宿ったのか、絶好調。神様がおられる間に仕上げてしまいたいので、邪魔されたくない。

大体こういう輩はタイミングが悪い。そんな日にやってきたのは不運であった。「謝らせてください」との申し出に「いりません、帰りなさい」と返事。話し始めたら、すみません、はい終わり、というわけにはいかんだろう。注意のひとつもせんならん。そうなると、せっかく宿っているマイゴッドがどこかへ去ってしまうかもしれない。

数回、謝る、帰れ、のやりとりのあと、堪忍袋の緒が切れて、「帰れいうたら帰れっ!」とどなって、論文執筆に戻った。窓側に置いてあるコンピューター画面に向かうと部屋の中の様子はわからない。そして、論文に集中すること半時間。


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