(2) Kumamoto Criteria
Kumamoto Criteriaとは,2019年に熊本大学のMarumeらが発表したATTR-CMをスクリーニングするための診断クライテリアである19)。
Marumeらは熊本大学病院において,99mTcピロリン酸心筋シンチグラフィを施行された70歳以上の連続181症例を対象に,99mTcピロリン酸心筋シンチグラフィ陽性に最も関係する因子を,血清生化学検査因子,心電図検査因子,心エコー図検査因子それぞれについてロジスティック回帰分析を用いて検討した。そして,血清生化学検査因子としてhs-cTnT上昇,心電図検査因子としてwide QRS,心エコー図検査因子として左室後壁壁肥厚が,99mTcピロリン酸心筋シンチグラフィ陽性と強く関連することを明らかにした。
さらに,ROC解析を用いて各パラメータの至適カットオフ値を決定し,左室後壁壁肥厚(13.6mm以上),hs-cTnT上昇(0.0308ng/mL以上),wide QRS(120ms以上)の3つを満たすと,96%というきわめて高い確率で99mTcピロリン酸心筋シンチグラフィが陽性であることを明らかにした。また,2つを満たすのみであっても99mTcピロリン酸心筋シンチグラフィ陽性率が63%と高値であり,ATTR-CMのスクリーニングに有用であることを明らかにした19)。この左室後壁壁肥厚,hs-cTnT上昇,wide QRSの3つを用いてATTR-CMをスクリーニングする方法がKumamoto Criteriaである(図9)19)。簡便な検査であっても組み合わせることで99mTcピロリン酸心筋シンチグラフィの検査前確率を判断することができるため,熊本大学病院をはじめ多くの医療機関で使用されている。

(3) Red flagsとKumamoto Criteriaをどのように利用するか?

Red flagsもKumamoto CriteriaもATTR-CMをスクリーニングするために,きわめて有用なツールである。Red flagsとKumamoto Criteriaをどのように利用するかについて,以下に筆者の個人的な見解を示す。
WittelesやInomataらの作成したRed flagsとKumamoto Criteriaを比較すると,Kumamoto Criteriaが項目数が最も絞られていて使いやすい。しかしながら,手根管症候群や脊柱管狭窄症の既往などの臨床所見,左室apical sparingなどの特殊な心エコー図検査所見が組み込まれていないため,患者の取りこぼしには注意が必要である。一方,Inomataらの作成したRed flagsは,臨床所見から心エコー図検査所見,心臓MRI検査所見まで幅広く網羅しており,ATTRwt-CMを取りこぼしなく拾い上げることに適している。ATTR-CMのスクリーニングにおいて重要なことは,“典型的なATTR-CMを確実に拾い上げる”ことであり,そのためにはKumamoto Criteriaを使用することが重要である。
また,WittelesらのRed flagsも典型的なATTR-CMのスクリーニングに有用と考えられる。しかし,非典型的なATTR-CM症例も少なくないため,非典型例を含めてスクリーニングするためには,InomataらのRed flagsが有用と考えられる。このように同じスクリーニング目的のRed flagsとKumamoto Criteriaではあるが,用途や目的に応じて使いわけることが重要と考えられる。
