[電子版付]
知りたいことがわかる 腎疾患テキスト
みなさんの質問からできた教科書です
アンケートから抽出した,現場の「知りたい」「わからない」に的確に答える
目次
CKD
1 章 腎機能の診かた―腎機能評価法とその使い分け
2 章 初診CKD患者の診察方法―非腎臓専門医・かかりつけ医のCKD診療
3 章 CKD予防・進展予防のための生活習慣
4 章 CKDステージごとの患者説明:SDM/CKM
5 章 ライフステージに応じたCKD管理
6 章 CKDの薬物治療
7 章 CKD患者(透析患者を含む)への薬剤投与:こんな薬剤で悩みませんか?
8 章 超高齢者や在宅・訪問診療でのCKD管理
9 章 CKDの腎性貧血マネジメント
10 章 CKDの運動療法
11 章 CKD患者のがん治療
12 章 腎代替療法
AKI
13 章 AKIの概念と初期診療
14 章 AKIのマネジメント
15 章 心不全合併AKI患者の治療
16 章 心不全合併AKI患者の輸液療法
透析
17 章 透析患者の輸液
18 章 透析患者の周術期管理
19 章 透析患者の生活指導
20 章 透析患者の血圧管理
21 章 透析をしない・やめるという選択,保存的腎臓療法(CKM)
22 章 ①透析患者におけるがん検診/②透析患者の便秘
Column
・腎機能に応じた薬剤投与:お助けシステム・アプリ
・腎臓専門医紹介のタイミング:専門機関への紹介基準
・rapid declinerとは
・CKD患者のヨード造影剤使用
・透析患者の抗凝固療法
・日々の課題:ドライウェイト(DW)設定の問題点
序文
序文
腎疾患と関わりなく仕事をする医療者は多くありません。成人の8人にひとりが「慢性腎臓病」とされ,高齢化の進展で腎機能が低下した方はますます増加すると思われます。医療の場においては,腎機能が低下した方を診療対象とする機会はいっそう増えると考えられます。
腎臓は,水や電解質の調整などを通じて,生体の恒常性維持に中心的役割を果たす臓器です。また,多くの薬物は腎臓から排泄されるため,薬物の投与設計をする上でも腎臓を考慮する必要があります。このように,理解が必須である腎臓ですが,それがなかなか難しい臓器でもあります。腎臓と言えば,多くの方が,昔生理学で習った「糸球体」や「尿細管」のややこしい機能などを思い浮かべ,積極的に学びにくいかもしれません。また多くの教科書は,教科書を作る側が,読者に「知ってほしい」ことを書こうとします。その結果,「読者が知りたいこと」とのずれが生じることが多いと感じていました。
そこで本書は,読者モニターのみなさまから,医療現場において腎臓が問題になる場合,「どのようなことを知りたいか」「どのようなことがわかりにくいか」をあらかじめ調査し,その結果に基づいて企画しました。頂いた質問を「CKD」「AKI」「透析」に分類し,それぞれの分野で関心の高かった事項を執筆項目としました。日々,臨床の現場で患者診療にあたっておられる先生方に執筆をお願いし,「読者が知りたいこと」に的確に答えて頂く内容になったと思っております。
本書の活用法ですが,臨床腎臓病学を全般的に知りたい方は,ぜひ本書を通読してください。一方,臨床で何か問題意識を持ったときには,本書の適切な部分をピックアップしお読み頂ければと思います。どの項目もさほど長くなく,10分間もあれば1項目を読める分量になっています。
最後に,本書は日本医事新報社のみなさまとともに企画・編集いたしました。この場をお借りして,編集部のみなさまに感謝申し上げます。本書を活用頂き,腎臓に関連する臨床現場でより適切な医療が行われることを祈念しております。
奈良県立医科大学地域医療学講座教授
赤井 靖宏
レビュー
深水 圭 (久留米大学医学部内科学講座腎臓内科部門主任教授)
【書評】エビデンスと臨床的な“勘”を交えた解説
本書は,普段の診療における疑問に答える形で執筆された腎臓内科の教科書です。腎臓への理解を深めるため,随所に工夫が凝らされており,その内容には驚かされます。まず,大きな単元として慢性腎臓病(CKD),急性腎障害(AKI),透析領域に分かれている点が挙げられます。腎臓専門医にとっては,腎臓病専門外来を行う上で重要な疾患が網羅されており,非専門医や研修医などの若手医師にとっては,CKDやAKIの章だけでも,保存期腎臓領域における実地診療のほとんどをカバーできる内容となっています。 特にCKDの第1章では,腎機能をどのように診るかについて,糸球体濾過量(GFR)の測定方法から,長期eGFRプロットによるスロープの重要性が詳しく説明されており,日常診療に役立つ内容から執筆が始められています。“column”や“覚えておきたい!”などのコーナーが随所に設けられ,ちょっとした実臨床での疑問の解決に非常に役立ちます。 各章には,themeとして実地医家が腎臓領域において疑問を抱いている内容が取り上げられ,それぞれがエビデンスと著者の臨床的な“勘”を交えて解説されています。そのため,まるで日常の腎臓診療をこの1冊でこなせるような感覚を得られるでしょう。さらに,専門医でも疑問に思うような内容,たとえば「ESAとHIF-PH阻害薬の使い分け」などについても丁寧に説明されています。 図やイラストが随所に用いられており,視覚的にもわかりやすく,表も見やすいので,参考書として診療中にさっと開いて診断や治療に役立てることができます。実地医家から専門医まで,この書籍を参考に幅広く腎臓診療を極めてください。