小児眼科 診療実践マニュアル
外来で困らない子どもの眼の診かた
早期発見・治療に結びつけるための診療のコツと工夫が満載!
目次
1章 小児の視機能の発達
1 視機能の正常発達
2章 小児の眼の検査
1 視力検査
2 屈折検査
3 眼科一般検査
4 眼位検査
5 両眼視機能検査
3章 疾患各論
1 屈折異常
2 弱視
3 斜視
4 眼球運動障害
5 眼瞼疾患
6 結膜疾患
7 角膜疾患
8 涙器疾患
9 ぶどう膜炎
10 緑内障
11 白内障・水晶体疾患
12 硝子体・網膜病変
13 視神経疾患
14 眼窩疾患
15 心因性視力障害
16 色覚異常
17 乳幼児における虐待性頭部外傷(乳幼児被虐待児症候群)
4章 学校保健・健診
1 学校保健
2 健診
序文
子どもの眼の病気は視機能の発達に大きな影響を及ぼすものが多くあるため,早期に発見し適切に治療することが求められます。しかし,小児特有の診療・検査の難しさがあることや,保護者へのわかりやすい説明が必要なことなど,成人診療との勝手の違いを感じている先生方も多いかと考えます。
小児の眼疾患では,疾患自体の治療で完結することが大半である成人例とは違い,手術が検討される例であっても術前後における弱視管理が重要となります。白内障を例に挙げると,水晶体の完全混濁例は原則として早期手術の適応ですが,部分混濁の場合は合併する屈折異常を眼鏡などで矯正し,その反応を見た上で手術適応を判断する必要があります。手術後も明視域を考慮した屈折矯正を継続し,優位眼遮閉など視覚感受性期間内における弱視治療の成否が最終的な視機能を左右することになります。
本書では視機能の発達,小児を対象とした各種検査の解説に始まり,疾患各論ではそれぞれの病態の理解を深めるために有用な疾患の機序に加えて,小児疾患に特有の診断方法や治療方針,家族への説明の工夫,さらに専門施設で行う高度な診療内容についても解説しています。また,疾患の発見に果たす役割が大きい学校保健,健診の項も設けました。白色瞳孔で発見される場合が多い網膜芽細胞腫や家族性滲出性硝子体網膜症などの網膜疾患,水晶体後方の増殖性疾患などは,白色瞳孔が明らかになった時点では既に病期が進行している可能性が高いと言えます。このため,より早い段階での異常表出であるネコ眼(暗所で瞳が光って見える)や片眼遮閉に対する嫌悪反応,斜視,眼振などの兆候が重要です。また,健診の際に保護者にこれらの有無を確認することも大切です。その時点では陽性所見がなくても,保護者の記憶に残ることで疾患の早期発見につながるものと考えます。
本書が小児眼科疾患に取り組もうとする先生方の良きガイドになることを願っています。
2023年11月
兵庫県立こども病院眼科部長 野村耕治
正誤表
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。
3行目
〈誤〉重要である→〈正〉重要である。
本文下から2行目
〈誤〉新生児封入対結膜炎→〈正〉新生児封入体結膜炎
本文下から5行目
〈誤〉堤防上増殖→〈正〉堤防状増殖
下段
〈誤〉就学時(6~7歳を目途に→〈正〉就学時(6~7歳)を目途に
検査の進め方 ②分類
〈誤〉→〈正〉
〈誤〉「分類として,以下の2つがある。」
〈正〉「角膜フリクテンはマイボーム腺炎角結膜上皮症の一病型である。マイボーム腺炎角結膜上皮症の分類として,以下の2つがある。」