ストレスチェック面接医のための
「メンタル産業医」入門〈改訂第2版〉
働き方改革関連法に対応した最新版【電子版付き】
面接医の実務を詳解。働き方改革関連法に対応した最新版
目次
B 産業医の実務
C 長時間労働者への面接指導
第2章 「メンタル産業医」の仕事術
B メンタル不調の予防
C メンタル不調をこじらせない工夫
第3章 ストレスチェック面接医の実務
B ストレスチェックの実施法
C 面接指導と事後措置
D 職場環境改善の取り組み
E 様々なツールの活用
付録
あとがき
序文
ストレスチェック制度導入に伴い面接医として企業と関わり合うようになった先生方が、本書を読むことで、企業と良好な関係性を構築できるように、またメンタル不調者に対して物怖じすることなくカウンセリングを行えるように、そしてこれらを通じて企業の生産性向上に貢献するとともに、先生方の医師としての職業人生が満足のいくものになって欲しい、との思いからこの本を執筆しました。
今日、産業医の業務は、メンタル疾患で休職している従業員の復帰支援と、生活習慣病への保健指導が中心となっています。いわゆる「健康経営」の意識が高い企業は、産業保健管理体制を整備し、経験豊かな産業医を雇用して対応しています。
しかし、そのような恵まれた企業はごくごく一部に過ぎないのが現実です。
従前からきちんと産業保健を提供している企業は、今さら産業医を募集することはありません。読者の先生方が面接医/産業医として赴任する企業の中には、もしかするとこんな状況が待っているかもしれません。
● ストレスチェック法制化に合わせて健康管理体制を急ごしらえ中のため、社内医療資源はほぼ皆無
● 労働基準監督署から指導されたから仕方なく産業医を選任。「産業医は税金みたいなもの」と邪魔な存在と考えている
● 社員同士が社内通報制度を悪用しては足の引っ張り合い
● 親会社で出世できなかった方が次々と落下傘降下。パワハラが吹き荒れる子会社にリストラ対象者を挙げさせる“保安官”として着任
● 産業医が企業に対して「勧告」を実施したとたん、健康管理受託業者に“選手交代”希望が出されて降板
● 株式公開にあたり証券取引所から指導されたから“産業医は居てくれたら良い”だけの「ブラック企業」
そんな医療資源も企業理解も乏しい現場に赴任した医師が、どうしたら受け入れてもらえ、医師らしいサービスを提供できるのか? その問いに応える『産業医の実務指南書』があったら苦労が報われるのに……、と思っていました。
なぜなら、前述のような企業で通用する、つまりは実務に適する入門書がほとんど見あたらなかった中、筆者は泥をすするようにしてほふく前進するほかありませんでした。類書の多くは、法規制を満足するための解釈で終わっていたり、恵まれた医療資源がなければ提供できない内容に終始していたからです。野戦病院で臨床力が磨かれるように、産業保健の「さ」の字もない企業でこそ培われる「産業医としての処世術」があると考えます。
産業医としての経験が浅い方、メンタル疾患への対応が苦手な方、さらには産業医資格を取得していないけれどもストレスチェックの面接医を引き受けざるを得ない方が大勢いらっしゃると思います。
そのような先生方が地雷を踏まないよう、筆者が“野戦病院”での実務で習得してきた「産業医としての処世術」を紹介いたしました。
この本が、『メンタル産業医』としてのキャリア形成の“根っこ”になれば、と願っています。
正誤表
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。
〈誤〉→〈正〉
214ページ
◆ストレスプロフィールの見方 2〜3行目を削除
「大きく張り出したところは大丈夫な部分、小さく収まって★印がついているところは要注意の部分です。」
領域C:ストレス反応に影響を与える他の因子
誤:この例は4つとも★印がついており、職場でも家でもあまりサポートが受けられていないか、助けを求めるのが苦手なタイプと推測できます。
正:この例は職場でも家でも十分なサポートが得られ、満足度も高いことを示しています。