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アルコール依存症候群

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-26
齋藤利和 (幹メンタルクリニック院長)
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  • ■疾患メモ

    アルコール依存症候群(alcohol dependence syndrome)とは,その人にとって以前にはより大きな価値のあった他の行動よりもはるかに飲酒を優先してしまう,一群の生理的,行動的,認知的現象で,アルコール依存症候群の記述的特徴はアルコールを使用したいという欲望である,とされている(ICD-10)。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    飲酒したいという,しばしば非常に強く,時に抵抗できない強い欲望や切迫感(渇望),以前よりも酒に強くなる(耐性),飲酒行動を抑制できなくなる(飲酒行動の統制不能),飲酒のために仕事や社会的活動を放棄する(飲酒中心の生活),飲酒に起因する重大な精神的・身体的問題が起こっているにもかかわらず断酒することができない(有害な飲酒に対する抑制の喪失),飲酒を中断・減量した後にアルコール離脱症状が出現する,などがみられる。

    アルコール離脱症候群(alcohol withdrawal syndrome)は,その出現の時間的経過から早期症候群(小離脱)と後期症候群(大離脱)にわけられる。前者はアルコール離脱後7時間頃より始まり,20時間頃にピークを持つもので,不快感情や心悸亢進,発汗,体温変化などの自律神経症状,手指,躯幹の振戦,一過性の幻覚(幻視,幻聴が多い),痙攣発作などである。後者は離脱後72~96時間に多くみられる振戦せん妄である。前駆症状として不穏,過敏,不眠,食欲低下,振戦などが出現し,ついで振戦せん妄に移行することが多い。意識混濁はそれほど強くなく,表面的には対応可能なことが多い。幻覚や幻視が多いが,幻聴がみられることもある。

    【検査所見】

    スクリーニングテスト:AUDITAlcohol Use Disorder Identification Test)は,危険な使用や有害な使用の同定を主眼に置いて開発されたが,アルコール依存症を比較的高い感度・特異度で検出すると言われている。cut-off pointについては,危険な飲酒は国際的には8点以上とされている。15点以上ではアルコール依存症を疑うが,20点以上では特に強く疑われる。

    血液生化学的検査:大量飲酒の指標としては現在,カーボハイドレート-デフィシエントトランスフェリン(CDT)の信頼性が最も高いが,測定が難しく通常は使用されない。γグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)も大量飲酒の指標として使われている。フィッシャー比(分枝鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸モル比)はアルコール依存症に認められる認知障害の指標として使える。また,フィッシャー比が小さければ離脱も出現しやすい傾向にある。

    画像:頭部CT,MRIで前頭葉,海馬領域の萎縮が認められることがある。

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